【1/1】その場所を埋めたのは【ymmt】 ページ16
がちゃり。オフィスの扉を開ける。仕事は楽しいけれど、休日明けは少し怠い。
「おはよ」
「……おはよう。こっちの部署に何か用事？」
僕に声を掛けてきたのは、記事の執筆や動画の裏方作業など、幅広く仕事を手がけているAちゃん。裏方班がこっちの部屋に来ることは珍しいが、伊沢さん辺りに用事でもあるのだろうか。
「こうちゃんに今日の動画のことで伝言と、記事についての相談が……」
スマホを見ながらそう言うAちゃん。どこか抜けていて忘れっぽい彼女は、「すみません、河村さんに用事…………が、あったんですけど忘れちゃいました。私何しに来たんでしょう」「知らないよ」なんてことが度々あったので、こっちの部署に用事がある時は予めスマホにメモっておくようになったらしい。
おっけ、じゃあ取り次ぐよ。……なんて言いながら、僕の目はある一点に釘付けになっていた。スマホを持つ左手の、薬指。隠れるように遠慮がちに、だけど勝ち誇ったように傲慢に輝く、銀色の光。
「……それ」
「？」
「結婚したの？」
「……見ての通りでしょ」
何でもないように言う彼女。僕が休みに入るまではなかった光。彼女の隣の席が空いていたのは、もう過去の話なのだ。
「……誰」
「ん？」
「君にその指輪を嵌めたのは、誰なの」
自分でも、馬鹿なことを訊いてるって分かる。職場で訊くようなことじゃない。
「……あのさ」
分かってるけどさ。
「…………マイスイートダーリン祥彰くんです♡なんて言えるわけなくない!? ここ職場だよ!? 家庭のノリ持ち込んだら駄目でしょ！」
「……てへ」
「っていうか、指輪見る度にそれ訊いてくるのなんなの!? 私たち、結婚して二週間だよ!? お休みもらって新婚旅行も言ったんだよ!? いい加減見慣れてよ！」
「いやあ、だってさぁ」
何回見ても嬉しいもんじゃん。大好きな人が、僕と同じ種類のそれを同じ場所に付けて。目に入る度、それを嵌めたのは僕だって再確認したくなるのもやむなしっていうかさ。Aちゃんが可愛すぎるのが悪いよ、うん。
「職場の人たちにバカップルって思われたら、恥ずかしくてお嫁に行けないんだけど……」
「もう僕のお嫁に来てんでしょ」
「そうなんだけどさぁ……」
―――
――
―
「……もうとっくにバカップルって呼ばれてるの気づいてないのかなあの人たち。あといつになったら山本さんはAさんを取り次いでくれるんだろう。俺もAさんに用事あるんだけど」
「あはは……」
「これ俺出てっていいかな？ どう思うとむ？」
「やめといた方がいいんじゃないですかねぇ」
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ユメ(プロフ) - うなぎさん» 引き込まれるなんて嬉しいです！最後まで楽しんでいってください！ (9月26日 7時) (
レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)
うなぎ(プロフ) - あと3話で終わってしまうなんて…とっても引き込まれてます！そして考えさせられちゃいます。後悔のないよう、ちゃんと感想を伝えようと思いました。結末を楽しみにしてます！ (9月25日 22時) (レス) id: 794a390090 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ(プロフ) - うなぎさん» 夢作家をしていて良かったと心から思えるような、嬉しいお言葉の欲張りセットみたいなコメントをありがとうございます！しかも密かに憧れている作者様からのコメントだなんて、もうこの喜びをどう表現していいものか……。本当に感謝です！ (9月9日 18時) (レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)
うなぎ(プロフ) - kwmrさんとfkrさんの掛け合いが楽しいし、ymmtさんは可愛いし、sgさんの誠実さに胸がいっぱいです！読みやすいお話たち、すきです♡お話が増えるの、楽しみにしてます！ (9月9日 15時) (レス) id: 794a390090 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ(プロフ) - misakiさん» コメントありがとうございます。どれか1話は、どこかの誰かに刺さるように、という思いで色んな話を書いているので、ぶっ刺さっていただけて大変恐縮です……。ご期待に添えるよう今後も精進して参ります！ (8月28日 7時) (レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユメ | 作成日時：2023年5月15日 3時
