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「……もう、こんなことやめてください」
「イヤでーす」
貴方が私に敬語で話しかける時は、真剣に話したいことがある時だ。だから私はちょっとからかうような声音で答える。
普通に私を心配しての発言なのは分かってる、貴方はそういう人だから。分かっててわざと嫌な返し方をしている。
「なんで、僕を怒らせようとするんですか」
「嫌われてる、って確認したいからです」
首に付いた手の跡を、指先でなぞりながら返す。
「なんで、嫌われていたいんですか」
「貴方の表情が、素敵だからです」
嫌悪という執着を、浴びていたいんだよ。アイドルをやめた今、
……でも、その
「……こんなのが、君が『あの人』にしたかったことなんですか」
「……」
『アイドルをやめてほしい、って言うなら、貴方は私に対して、代わりに何をしてくれるんですか？』
『そんな難しい顔しないでくださいよ。ただ私は欲深いから、貴方に応えられるのかと思って』
『あの人がくれなかったものを私に与えてください。あの人にあげられなかったものを私に与えさせてください。あの人にしたかったこと、してほしかったこと、全部叶えてください。……それが、条件です』
「……そうですよ」
「こんなの」じゃないよ。貴方がしてくれるなら、何だって価値があるんだ。私にとっては貴方の「アイドルをやめてほしい」って願いこそが「こんなの」なんだ。
『身勝手な願いなのは分かっています。でも、もうあいつを苦しめないでください。これ以上、あいつが壊れていくのを見ていたくないんです』
……それに、貴方は知らない。もうとっくに、福良拳は元の善良(だったらしい)な福良拳でなくなっているってことを。首をなぞっていた指を肩の近くまで滑らせながら思う。
貴方は精々、とっくに壊れてしまった福良拳を私から守る騎士様でいてよ。……できれば、永遠に。
「でも、まだ殺さないでくださいね」
「……善処します」
「助かります」
「…………首、ごめんなさい。もう苦しくないですか？」
「ええ、おかげさまで」
「こんなの」のために自分を殺して、私からの話でしかその存在を知らない「あの人」の代わりを果たそうとしてくれる、愛おしくてたまらない貴方へ。貴方の手を汚した、最低で醜い人間を純粋に心配して声をかけてくれる、優しくて仕方ない貴方へ。
最大限の親愛と敬意を込めて、その白い手にそっと口付けを落とした。
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ユメ(プロフ) - うなぎさん» 引き込まれるなんて嬉しいです！最後まで楽しんでいってください！ (9月26日 7時) (
レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)
うなぎ(プロフ) - あと3話で終わってしまうなんて…とっても引き込まれてます！そして考えさせられちゃいます。後悔のないよう、ちゃんと感想を伝えようと思いました。結末を楽しみにしてます！ (9月25日 22時) (レス) id: 794a390090 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ(プロフ) - うなぎさん» 夢作家をしていて良かったと心から思えるような、嬉しいお言葉の欲張りセットみたいなコメントをありがとうございます！しかも密かに憧れている作者様からのコメントだなんて、もうこの喜びをどう表現していいものか……。本当に感謝です！ (9月9日 18時) (レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)
うなぎ(プロフ) - kwmrさんとfkrさんの掛け合いが楽しいし、ymmtさんは可愛いし、sgさんの誠実さに胸がいっぱいです！読みやすいお話たち、すきです♡お話が増えるの、楽しみにしてます！ (9月9日 15時) (レス) id: 794a390090 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ(プロフ) - misakiさん» コメントありがとうございます。どれか1話は、どこかの誰かに刺さるように、という思いで色んな話を書いているので、ぶっ刺さっていただけて大変恐縮です……。ご期待に添えるよう今後も精進して参ります！ (8月28日 7時) (レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユメ | 作成日時：2023年5月15日 3時
