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北人の舌が私の腔内の体温を丁寧に吸い取っていく 。優しくて少し横着で 、そして何処にも行く宛のない口付けだった 。無数の小説が散らばる机にガタンと背をつけば 、逃すまいとすかさず伸し掛かってくる北人 。お互いの熱を帯びた吐息が混じり合う中で 、制服の下からするりと滑り込んで来る大きく骨張った少し冷たい手にピクリと身体が震えた 。頬 、首 、鎖骨 … それから胸元を彼の手が這いずって 、リボンを解くらしい布の擦れる音が妙に冴えて聞こえてくる 。
「 脱がしてもいい ? 」
「 ん … 」
慣れた手付きでリボンまで解いたくせして今更お伺いを立ててくる所が何より北人らしくて 、思わずそっと笑みが零れた 。「 なに笑ってるの ? 」 端正な指が私の髪の毛を優しく這う 。まるで拠り所のないキスの居場所を探るようにして 。「 なんでもないよ 、 」 丁寧に私の下唇を撫でて 、時折声を漏らしながらそれらを受け止める私を見て 、北人は満たされたように笑った 。
「 しーな 、だいじにするからぼくから離れていかないでね 、 」
北人の指や唇が私の身体を這う度にきゅんきゅんとお腹の奥が北人そのものを欲しがるように疼いた 。古びた机の上で彼と同じリズムを刻みながらも口元からはだらしなく銀の糸を引かせて 、あらゆる愛撫で互い互いに何かを奪い合いながら汚し合う 。ずるずると音を立てて壊れていく理性と言語化出来なかった感情たちが液体になって北人の中に染み込んでいく 。私達はゆっくりとお互いの体温の中に落ちていった 。
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みお(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (10月12日 17時) (レス) @page16 id: 53a16e4f6e (このIDを非表示/違反報告)
saku8124974(プロフ) - 最高です🥹 (2023年1月7日 22時) (レス) @page7 id: 113282aa35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:栞奈 | 作成日時:2017年12月18日 16時