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それから私達は何度かおはようとまた明日を交わすようになって 、次第にあの埃臭い資料室で一緒に授業を疎かにする日だけが増えていった 。今日もその日 、カーテンの隙間から明るい陽がそっと顔の上に落ちる 。恐らく北人の私物であろう乱雑に積まれた小説の数々にちらっと目線を移すと 、ミステリーから恋愛もの 、ホラー 、ライトノベルが表紙を覗かせていた 。本と本の波間からさっと手に取った小説にせっせと目を走らせていると 、
「 え 、 」
いわゆる官能小説と呼ばれる類のものだった 。生々しい文章で最中のあれこれが淡々と書き綴られている 。能動的に善がる女とそれをも愉しむ男 。キスさえしたことのない生娘ながら好奇の目をかねて注いでいると「 なあに読んでるの ? 」 背後からひょいっと顔を覗かせた北人に思わず声を上げそうになった 。狼狽を顔に漂わせる私を他所に北人は悪びれる様子もなく 「 またサボり ? 」 なんてお気楽な言葉を続けた 。
「 授業はちゃんと受けないと後悔すると思うよ 、しいな 。まあ僕が言えることじゃないんだけどね 」
「 北人は後悔してるの ? 」
「 大半寝て過ごしてたことはね 。お陰でこの前の数学も赤点ギリギリだったんだ 。なんでだろうね 、本ばっかり読んでるとやっぱり偏っちゃったりするのかなあ … 古典はばっちりだったんだけどさ 」
肩を震わせてくすっと笑った後 、あれからずっと大切に手に持っていた例の小説を机の上に戻そうとすると 「 ねえ 、 」 形良く並んだ歯をすらりと見せて頬に微笑の皺を寄せた北人と目が合った 。
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みお(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (10月12日 17時) (レス) @page16 id: 53a16e4f6e (このIDを非表示/違反報告)
saku8124974(プロフ) - 最高です🥹 (2023年1月7日 22時) (レス) @page7 id: 113282aa35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:栞奈 | 作成日時:2017年12月18日 16時