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「 友達じゃないよ 」
そう言うと北人くんは少し怪訝そうな顔をした 。昔から人並み以上に勉強は出来たし友達もいた 。父と母と俺の三人暮らしで喧嘩は滅多になく 、記憶の中の両親はいつも穏やかに笑っている 。冷蔵庫を開ければいつも父親の缶ビールが寂しげに二本並んでいるような至って普通の家庭 。どこを取っても平凡な人間だ 。分かりやすく首を傾げる彼に 、俺はまた言葉を続けた 。
「 知らない子だよ 。話した事もないし 、好きでもなかった 。告白する方にばっかりフォーカス当てられても困るっつーの 、振る方だって結構気力使うんだけど 」
「 よくない言い草だね (笑) 好きな子はいるの ? 」
「 いやそれも別に 。北人くんは ? 」
「 僕はそういうの 、疎くてよくわかんないんだけど … いる 、かも … ? 」
少し間を置いて 「 いるの ? 」 と聞き返すと 、北人くんはこくりと頷いた 。鼻筋が通っていて唇の形がいい 。その中でも目がいかにも利口そうで 、色白の頬には赤みが差している 。好みはあるにせよ目鼻立ちのどれ一つをとっても美しかった 。触れたくて手を伸ばせばすっと儚げに消えてしまいそうに見えた 。そういう種類の美しさだった 。天真爛漫でいつも愛想のいい彼なのに 、何故か彼の周りに人は寄り付かなかった 。
「 じゃあよかったね 、俺以外に話せる友達が出来て 」
「 はは 、なんか刺さるね 、その言葉 (笑) 」
「 まともに授業受けないからクラスメイトとの交流が減るんだよ 。だから俺以外まともな友達が出来ないって訳 。… そういえば北人くん 、いつも何してるの ? 学校には来てるんでしょ ? 」
「 ああ 、いつもあっちの資料室でそのすきな子 … ? とシ てるよ 」
「 …… 何を ? 」
「 あれだよ 、___ 」
やけに生々しい事を言うもんだ 、と話半分で聞き流していた愚かな自分を歯切れの悪いナイフで滅多刺しにしておくべきだった 。後になって息をする間もないくらい後悔する事になるとは知らずに 、俺はただ北人くんのその言葉を苦笑いで誤魔化した 。
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みお(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (10月12日 17時) (レス) @page16 id: 53a16e4f6e (このIDを非表示/違反報告)
saku8124974(プロフ) - 最高です🥹 (2023年1月7日 22時) (レス) @page7 id: 113282aa35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:栞奈 | 作成日時:2017年12月18日 16時