花葬と、青。 (ページ11)

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｢アイツ(・・・)はお前を捨てたんだよ。お前は本当に可哀想、かわいそうだね？ (笑) 結局はアイツはあの男を選んだんだ。お前、一度永遠の愛が誓った女がどこの馬の骨とも知れない男に抱かれてる声を聞いた事があるか？俺は今まで生きてきた中で一番の屈辱をあの女、それもお前の母親に味わわされた。だからお前もだよ。俺が堕ちるならお前も道連れにして堕ちる所まで堕としてやるからな｣

｢わかっ … たか、らっ … やめ … ぉと、さっ、｣

　

　
声帯を震わせるだけの空気はない。肺は新鮮な酸素を死にものぐるいで求めていたが、とてつもない力で隙間なく塞がれた気管には当然そんなものはなかった。耐えきれなくなって口を開いた途端、ぬるっと差し込まれた舌が私の腔内を這いずり回る。

　
「っは … わかってくれるよね、Aちゃんなら。… わかって、わかってね」

　
ようやく父の手が離れると、私の身体は途端に酸素を求めた。圧迫されていた気管にこの家の淀んだ空気が入り込むのもお構いなしに必死に吸って吐いてを繰り返す。父はそんな私を生々しい欲望を存分に閉じ込めた瞳で愛らしそうに見詰めていた。

　

「お父さんにはAちゃんだけなんだから。こんな事をするのもAちゃんを、Aちゃんだけを愛してる証拠なんだよ。そうでしょ？ Aちゃんもそう思うよね、だからお父さんを嫌いにならないでね」

　
「、うん、わかってる、わかってるよおとうさん、」

　

　
　
父が私に欲を持った情を仄めかすと、母は決まっていつも子供のように怒り、泣いていた。“ あんたはこれ以上、私から何を奪えば気が済むの？私、なんて言えばいい？ ” 冷たく吐き捨てられたこの台詞が母との最後だった。いつも私を見下し、蔑んでいた母がいなくなった今、全身に溢れるこの憎悪の捌け口を私はこの数十年間、泥沼の中でずっと探している。両足が執拗なまでに泥を纏って歩きづらい。透き通った青を走る皆をひたすら羨ましがって、お金はあっても愛という言葉の一欠片も見当たらないこの家庭にはいつも吐き気がしていた。

　
　

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