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「大体さ、世界とか時空を飛び越えるのに何の代償もないって言う考えが浅はかでしかないし、異分子が入るなら拒絶反応みたいなのもあるでしょ。それなのに、身体を奪われた途端、ギャーギャー騒ぐなんてみっともないし、自己中すぎる。違う?」
「……ああ。君の考えは、正しいよ。だけど……」
「ああもう!!!」
背中のばねを使って、影が勢いよくふくろうに迫る。
勢いを殺すために着いた手がバンッと大きな音を立てた。
「その気遣いも、あんたのエゴだって言いたいの!!!私は!!!わかってくるせに言わせんな!!!」
苛立ちを含んだ声。目の前に突き付けられた人差し指は、怒りのため微かに震えている。
「あんたは、あんたに与えられたからだと記憶と力で、この世界を生きればいいの!!私は、貴方の付属品でしかない!!この世界に、もともと存在してなかったの!!!ただ、異能が人格を持ってしまっただけに過ぎない存在。利用価値のあるものでしかないの。利用すべきものに気を使ってたら、あんたは何にもできないままなんだよ!あんたはこの世界で好きな人ができた!好きになってくれた人もいる!大切にしたいものがある!!明日も、また、この世界で目を覚ましたいっていつも願ってる!!!私の体を、貴方は必要としてる。必要としてくれてる人がいるなら、私は体なんかいらない!!」
「……でも、君は、やりたいことがたくさんあっただろう。それは、もういいのかい?」
「よくない!!でも、私の欲を優先して、他人の幸せを奪うほど、人間終わってないつもりだよ!」
そう云って、影はため息をついた。
「ふくろうはさ、優しすぎるんだよ。何があっても自分のせいにして、他人を責めるって感情が何一つない。怒りもしない。あんたはさ、もっと図々しく、わがままになるくらいでちょうどいいんだよ。それこそ、乱歩さんみたいに」
「名探偵のようになるのは、少し難しいかもしれないね」
「だとしてもだよ!ふくろうは、もっと『欲』を持つべき。ねえ、欲しいものとかないの?やりたいこととかさ」
影に云われ、ふくろうは黙り込む。
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2021年4月24日 1時