8話 ページ9
「で、メイドってのは、俺らの仕事を少し手伝って欲しくて。その方が俺らも一緒に行動できる時間が増えるし」
説明しながら、お腹すいた?なんて聞かれるものだから、反射的に頷いてしまった。はしたない行動をしてしまったと反省していれば、どこから取り出したのか暖かいパンを渡される。
「…ありがとう、ございます。美味しそうです」
「ら民が作ってくれたんだよ。あ、まだら民に挨拶してないんだ」
話に出てきた人だろうか。確かにこの街で暮らすなら挨拶回りはしておきたい。受け入れてくれるか、分からないけれど。
「みどりくん、ウォッチ出せる?」
「アーウン」
みどりさんが、運営が付けているものと同じ形の腕時計を出す。何度見ても便利な能力だ。らっだぁさんも同じ能力なのだろうか。
「…コレ、今ノID適当ニシテルカラ」
「…?」
腕時計を渡されて、同じように付ける。ID。言っていたのは分かるけれど、なんの事かさっぱりだ。助けを求めるように運営の皆を見れば呆れたようにらっだぁさんが間に入る。
「もぉみどりくん?女の子相手だからってキョドんなって!俺より説明できてないよ?」
「ハ?」
言うが早いか、らっだぁさんが目の前から消えた。びっくりしすぎて何が起こったのか分からなかったけど、数秒もすれば、叫びながら帰ってきた。
「なんでBANしたの」
「ラダオクンガワルイ」
そう言ってみどりさんは消えてしまった。後を追うようにきょーさんとコンタミさんが消えて、らっだぁさんがため息をつく。
「えっとねぇ、ID持たせてるって話したでしょ」
「はい」
「今Aちゃんは一時的なIDを持ってるんだよね。だから再設定しなくちゃいけなくて」
私の腕についたその機械を少し触って、説明をしてくれる。IDを変えて保存をする。これで私は正式にこの街の住人になったようだ。
「挨拶、してみようか。ここでね、チャット欄が開けるよ」
「…なんて言えばいいですか?」
「よろしくお願いします、それだけでいいよ」
ドキドキしながらチャットと言われるその欄に書き込む。自分の名前も入れる方が、いいかもしれない。
>よろしくお願いします、Aです。今日からこの街にお邪魔します。
>よろ
>yoro
送ってすぐ、多くの人からの返事。優しい人たちが管理するこの街の住人は、管理人に似てとても優しいことが分かった。レウさんを見れば、よかったね、なんて笑ってくれるから。
「…暖かいですね、この街は」
そんなことを口に出した。
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クリーム煮(プロフ) - うるさん» コメントありがとうございます、とても嬉しいです。かなり遅くなりましたが、短い話を更新させて頂きました。ゆっくり更新ではありますが、これからもよろしくお願い致します。 (2021年2月6日 7時) (レス) id: b4b4f8ee5a (このIDを非表示/違反報告)
うる - とってもこのお話、好きです!もっと続けて欲しいです…また更新される日は来るのでしょうか?無理にとは言いませんが出来るだけ早く更新されるのを楽しみにしています! (2021年1月23日 21時) (レス) id: 82c88543dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クリーム煮 | 作成日時:2020年11月24日 21時