けじめ ページ9
「河野先生。」
Aは職員室から出て来た純喜を呼び止めた。
純喜の顔が少しこわばった。
「ん？どした？」
Aはピラリとプリントを振った。
「質問があるんですけど。数学の。」
純喜が当たりを見回す。
女子生徒がこちらを見て
こそこそ話している。
「おん。ほな、こっち。」
進路指導室が階段を挟んで職員室の隣にある。
純喜は進路指導室へ促した。
進路指導室は長細い教室で、
壁際にずらりと受験の資料が並んでいる。
二人は手前の長テーブルに腰掛け、
向かい合った。
Aが持ってきたのは
Aクラスの応用問題プリントだった。
「おっけ。どこが分からん？」
「この2問目なんですけど…」
純喜は筆箱から赤ペンを取り出し、
すぐに解説を始めた。
スラスラと公式を書き出し、
説明すると、
Aが少し首をかしげた。
隣に図を描いて追加の説明をすると、
Aは、うんうんとうなずき、
納得したように微笑んだ。
この瞬間は、純喜にとって快感だ。
解説に力が入る。
「ここまで言ったら
もうAなら、全部解けるやろ。
こっちも同じ公式で解いてみ？」
「はい。」
プリントの右半分の問題を指し、
Aはプリントに計算式を書き出した。
同じ公式を使うとわかっていても、
応用問題だと、そう簡単に
答えは導き出せない。
Aは考えながら
下唇の下でシャーペンの芯を
カチカチと出した。
はっとひらめいて、
サラサラとシャーペンを滑らし、
ふぅとため息をついて、
髪を左耳にかける。
それがAの出来た時の合図。
純喜はAの小さな癖を覚えていた。
大人ぶってるくせに
ちょっとしたところが子供っぽい。
少し微笑ましく思えて、
思わず笑みがこぼれた。
純喜の思ったとおり、
Aは回答を書き終えて、
すっとプリントを差し出した。
「出来ました。」
「見せて？」
Aの答えは完璧だった。
純喜はプリントに大きな花丸をつけた。
「やるやん！
これやったら入試の問題も…」
純喜がパッと顔を上げた時だった。
ネクタイが引っ張られた。
ぐっと前に引かれた。
赤いスカーフが眼の前で
揺れるのが見えた。
気がつけば、
Aとキスしていた。
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ののん(プロフ) - かなさん» コメントありがとうございます！私も更新するたび、hit数が上がると、読んでくださる方がいるんだなと実感できて、毎回更新するのが楽しみでした。次回のお話もぜひ読んでください！ (2021年8月14日 22時) (
レス) id: 81e0daef40 (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - 萌萌さん» コメントありがとうございます！私自身三人称で書いて行くのが初めてだったので、試行錯誤の繰り返しでした。次回のお話もぜひ読んでいただけると嬉しいです！ (2021年8月14日 22時) (レス) id: 81e0daef40 (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - mbonchanさん» コメントありがとうございます！ルート説を読んでいる方に理解して頂くためには、同窓会まで繰り返さないと弱いかなと思い、同窓会のシーンまで書きました(^^)次回もぜひ読んでいただけるとうれしいです！ (2021年8月14日 21時) (レス) id: 81e0daef40 (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - nanaさん» コメントありがとうございます！書き方などを勉強中なので、褒めていただいて、すごく嬉しいです（；＿；）私も一応読み直してかきましたが、矛盾がないか不安です笑次回のお話もぜひ読んで下さいねー！ (2021年8月14日 21時) (レス) id: 81e0daef40 (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - クミさん» コメントありがとうございます！楽しみと言ってくださる方がいたので、頑張って更新が出来ました(^^)次回も頻繁にアップ出来るように頑張ります！ (2021年8月14日 21時) (レス) id: 81e0daef40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ののん
| 作成日時：2021年7月22日 1時
