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正面玄関近くに停めた車に向かった。
拓実がドアを開け、運転席に乗り込んだ。
萌香は戸惑った様子で
ドアの前に突っ立っていた。
「いいよ。助手席乗って！」
「はい！」
ぎこちなくドアを開け、
萌香が助手席に座った。
「シートベルトしてな。」
「はい！」
萌香は元気よく返事したものの、
シートベルトを探す動きはない。
「シートベルトわかる？」
「え？あ？すみません。」
萌香がわたわたとシートベルトを探す。
右側を必死にまさぐっている。
「こっち。」
拓実が被さるように
萌香の奥のシートベルトを引いた。
萌香がふっと少し後ろに引いた気がした。
「車乗ったことないん？」
拓実が片方の口角を上げて笑った。
「いえ！ありますよ！」
萌香が慌てて否定した。
「ちょっと緊張してて…」
「なんで？」
「えっと…」
萌香の潤んだ瞳で見つめられ、
拓実はうっと息を止めた。
『萌香は拓実くんのファンやねん』
潤の言葉が拓実の頭をよぎった。
「川西先生、憧れなんです…」
「…ははっ、ありがとう。」
真正面から『憧れなんです』と言われて
照れない人はいないだろう。
大人になったとはいえ、
感情をかくすのは今でも苦手だった。
拓実は平気なふりをして
ポケットから鍵を出して、
エンジンを回した。
「家、どこなん？」
「私は…中根町です。」
「うそ、俺んちもその辺やで。」
「ほんまですか？」
「じゃあ、家まで送ったるわ。
中根町、駅から遠いやろ？」
「あ、ありがとうございます！」
沈黙が続いた。
かけたラジオが音楽をながしている。
高校野球応援歌特集だった。
甲子園の開幕も目前に迫っている。
「あ、この曲…」
萌香がつぶやいた。
「知ってるん？」
「この前、応援の時、吹いた曲。」
「応援？そうや、萌香、吹奏楽部やん。」
「え、あ、はい。そうです。」
「吹奏楽部の応援、めっちゃ良かった。
あの応援でみんなすごい頑張れたって言うてたで。」
「良かったです」
「ありがとうな。
野球部を代表して言うとくわ。」
「いえ、私はただ吹いてただけで…」
「ううん。ホンマ応援って
力になるからさ。」
「ありがとうございます…」
萌香の声がすぼんでいった。
「なんで？まだ緊張してるん？」
「え、いや…川西先生、
私の名前知ってたんやと思って。」
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ののん(プロフ) - かなさん» コメントありがとうございます！私も更新するたび、hit数が上がると、読んでくださる方がいるんだなと実感できて、毎回更新するのが楽しみでした。次回のお話もぜひ読んでください！ (2021年8月14日 22時) (
レス) id: 81e0daef40 (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - 萌萌さん» コメントありがとうございます！私自身三人称で書いて行くのが初めてだったので、試行錯誤の繰り返しでした。次回のお話もぜひ読んでいただけると嬉しいです！ (2021年8月14日 22時) (レス) id: 81e0daef40 (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - mbonchanさん» コメントありがとうございます！ルート説を読んでいる方に理解して頂くためには、同窓会まで繰り返さないと弱いかなと思い、同窓会のシーンまで書きました(^^)次回もぜひ読んでいただけるとうれしいです！ (2021年8月14日 21時) (レス) id: 81e0daef40 (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - nanaさん» コメントありがとうございます！書き方などを勉強中なので、褒めていただいて、すごく嬉しいです（；＿；）私も一応読み直してかきましたが、矛盾がないか不安です笑次回のお話もぜひ読んで下さいねー！ (2021年8月14日 21時) (レス) id: 81e0daef40 (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - クミさん» コメントありがとうございます！楽しみと言ってくださる方がいたので、頑張って更新が出来ました(^^)次回も頻繁にアップ出来るように頑張ります！ (2021年8月14日 21時) (レス) id: 81e0daef40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ののん
| 作成日時：2021年7月22日 1時
