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拓実の声で
Aはその女性から
目をそらした。
何故か拓実は
Aを『ゆき』と呼んだ。
「こんちは。
どなたですか？」
拓実がいぶかしそうに女性を見て
Aの前に立ちふさがる。
Aは声を出せずに
拓実に首を振った。
「何か用ですか？
用ないなら、行きますけど。」
女性は拓実を睨みつけたまま
動こうとしない。
「『ゆき』、行こう。」
拓実がAの手を握って、
自分の近くに引いた。
「うん。」
Aは女性にペコリと頭を下げ、
拓実に引っ張られるがままついていった。
駅の階段を駆け上がった。
何人か園田高校の学生が
改札の前でたむろしていたが、
一直線に改札を通った。
改札を通ると、
ホームが二手に分かれる。
「A、どっち？」
拓実が息を切らせながら、
Aに尋ねると、
Aは不安そうな顔をして
拓実を見つめた。
拓実が自分の手を見て、
パッと手を離した。
「ごめん！」
「ううん。」
Aは小さく首を振った。
「どしたん？
『ゆき』って誰？」
Aはくすっと笑った。
拓実がポリポリと頭をかく。
「ゆきは…俺のお母さんの名前。
咄嗟にそれしか出てこーへんかった。」
「何で私が川西くんのお母さんなん？」
「ちゃうねん。
祥生が言ってたんって今の人やろ？
Aを探してるって。
明らかに変な人やったやん。
Aって呼んだら、
AがAってバレるから。」
拓実が意外と機転が利くことに
驚いた。
Aは一瞬ハンカチを返してもらおうと
『そうです。』と答えようとした。
「確かにちょっと…
変な人やと思った。」
Aは無意識に
胸元ののスカーフを握る。
「やろ？危なかったー。」
拓実はAの最寄駅方面のホームへ
階段を降りていく。
拓実が振り返った。
「俺がおって良かったやろ？」
いつもみたいな
授業中に間違えた時にテヘヘと笑う
いたずらっぽい笑顔だった。
Aは微笑む事しかできなかった。
『川西くんがいてくれてホンマに良かった』
本当に思っていることは
なかなかことばに伝えられないものなんだと
Aは気づいた。
Aも拓実の背中を追って
階段を降りた。
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ののん(プロフ) - carryさん» お返事遅くなりすみません(T_T)お読みいただき、ありがとうございます。パスワードはjuntakuです(^^) (2021年9月12日 16時) (
レス) id: 81e0daef40 (このIDを非表示/違反報告)
carry(プロフ) - とても面白くて一気に読んじゃいました。続きのパスワードを教えていただくことはできますでしょうか？ (2021年9月7日 23時) (レス) id: def8c9f4b6 (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - nanaさん» コメントありがとうございます！海のところは私も書きたかったところなので、褒めていただけて嬉しいです！これから辛い展開になりますけど、どうか最後までお付合いいただけると嬉しいです(T_T) (2021年6月18日 0時) (レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
nana(プロフ) - 海の帰りの車の中のシーンめちゃくちゃドキドキしちゃいました(泣)純喜くんも川西くんも動き始めて、どきどきの展開です(泣)毎話面白いお話をありがとうございます、これからも楽しみにしています！ (2021年6月15日 15時) (レス) id: eaa2ab5b8c (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - クミさん» コメントありがとうございます(^^)更新待っていて下さる方がいるのは嬉しいです！頑張って最後まで書きますのでお付合い宜しくお願いします！！ (2021年6月13日 0時) (レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ののん
| 作成日時：2021年5月4日 18時
