対面 ページ12
図書室で勉強していたAと合流し、
拓実とAは並んで校門を出た。
太陽が一番高い時間帯だった。
自転車のサドルがジリジリと焦げ付くようだった。
暑くて至るところから汗が吹き出た。
Aがパタパタとうちわで扇ぐと、
Aを通った風が拓実まで届いた。
うだる暑さに爽やかな柔軟剤の香りが
拓実の鼻腔をくすぐる。
「なあ、A。」
拓実の呼びかけにAが顔を上げる。
「俺、家まで送るわ。」
「何で？ええよ。」
「いい。送る！」
「自転車あるやん。」
「自転車は駅の駐輪場に
駐めるから大丈夫。」
「でも、電車も乗らなあかんし。」
「一緒に乗ればいいやん。」
拓実は一切引かない。
「何で？
もしかして大平くんが言うてたやつ
気にしてくれてる？」
「そう。心配やもん。」
「大丈夫やで。
何でかはわからんけど、
普通に私にハンカチ返してくれようと
してるだけやと思うし。」
「でも、何でその人
Aの名前知ってんの？」
「うーん。それは…わからんけど。」
「いい。心配やん。ほんま。」
「みんなめっちゃ心配性やん。」
Aがわがまま言う子どもを諭すような
優しい声でクスクス笑う。
「みんなって？祥生？」
「うん。
河野先生も何かめっちゃ慌ててた。」
「純喜くんとその事でしゃべったん？」
「うん。」
『だから何？』
拓実には
Aの瞳が拓実を
あざ笑っているかのように見えた。
些細なことかも知れないが、
純喜が拓実に一言もその話をしなかったことが
気にかかった。
てっきり不審者の話は祥生が純喜に
話したんだと思っていた。
でも祥生は英語の補習にも出ていた。
あの話を純喜に伝えたのは
Aだったのかも知れない。
『何でAと話したこと、
純喜くん何も言ってくれんかってん。』
チリチリと嫉妬心が拓実の心をついばむ。
「いい。俺が送りたいだけやから。」
低い声でつぶやく拓実に
ようやくAがおれた。
「…じゃあ、お願いしようかな。」
拓実がちょっと早足になる。
散々Aが引いたので、
拓実がいじけてしまったかと
あとを追いかけ、顔を覗き込むと、
目は少し不機嫌だけど、
口元は微笑んでいた。
AもAで
拓実の提案を何度も断っておいて、
心の中では、拓実がいてくれることに
少しホッとしていた。
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ののん(プロフ) - carryさん» お返事遅くなりすみません(T_T)お読みいただき、ありがとうございます。パスワードはjuntakuです(^^) (2021年9月12日 16時) (
レス) id: 81e0daef40 (このIDを非表示/違反報告)
carry(プロフ) - とても面白くて一気に読んじゃいました。続きのパスワードを教えていただくことはできますでしょうか？ (2021年9月7日 23時) (レス) id: def8c9f4b6 (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - nanaさん» コメントありがとうございます！海のところは私も書きたかったところなので、褒めていただけて嬉しいです！これから辛い展開になりますけど、どうか最後までお付合いいただけると嬉しいです(T_T) (2021年6月18日 0時) (レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
nana(プロフ) - 海の帰りの車の中のシーンめちゃくちゃドキドキしちゃいました(泣)純喜くんも川西くんも動き始めて、どきどきの展開です(泣)毎話面白いお話をありがとうございます、これからも楽しみにしています！ (2021年6月15日 15時) (レス) id: eaa2ab5b8c (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - クミさん» コメントありがとうございます(^^)更新待っていて下さる方がいるのは嬉しいです！頑張って最後まで書きますのでお付合い宜しくお願いします！！ (2021年6月13日 0時) (レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ののん
| 作成日時：2021年5月4日 18時
