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「大月さんって、
何かいいよなぁ。
いつも落ち着いてるしさぁ。」
休み時間にボケッと頬杖をついて
何気なく放った拓実の一言が、
クラスメートたちを動かした。
坊主頭の拓実は、クラスでよく目立つ。
園田高校野球部は全員坊主頭で、
各クラスに2,3人野球部がいるけど、
拓実のクラスは何故か
拓実だけしかいない。
登校するたびにクラスメートから
キレイに刈られた頭を撫で回され、
授業中には、必ず先生に坊主頭を指される。
進学校では、
賢くない人間ほど可愛がられる。
拓実は、どの教科もあまり出来が良くなかった。
黒板に答えを書きに行っても、
大抵は間違っている。
誰も助けの手を差し伸べたりしない。
『あー、また間違えてるよ。』
『可愛い拓実。』
『拓実がいるから、
クラスでビリを免れてるわ。』
笑われることは、慣れていた。
『また間違えちゃった。』とテヘヘと笑うと、
クラスのみんなが
アハハと声を上げて笑ってくれる。
自分のバカさが
教室の雰囲気を明るくしているのも
知っていた。
でも、拓実にも自尊心がないわけじゃない。
笑われるのが、悔しいときもある。
だから、
クラスメートが笑い声を上げる中で、
一人無表情で黒板を見つめるAは、
とても心が美しい人のように見えた。
「拓実、Aのこと好きなんやって。」
拓実の言葉を聞いたクラスメートは
すぐに本人に伝えてしまった。
しかも『何かいいなぁ。』と言っただけで
『好きだ。』とは一言も言っていない。
「ほんま？」
Aは特に照れる様子もなく、
くすっと笑った。
「いや、『何かいいよなぁ。』って
言っただけやん！」
拓実は慌てて上擦った声で否定した。
「『いいよなぁ』も『好き』も一緒やん。
A、一回ぐらい一緒に帰ってあげれば？
拓実も定期テスト前ぐらいは
野球部も休みなんやろ？」
「まあ、それはそうやけど…。」
クラスメートたちはそんな3人の様子を見て、
ニヤニヤと笑っていた。
Aの普段と変わらない反応からして、
Aは拓実には興味がなく、
拓実は公の前で振られ、
みんなに笑われ、
『可哀相な拓実』と
可愛がられるのがオチだとみんなが思っていた。
拓実でさえ、そう思っていた。
だから、
Aがあっけらかんと
「え？いいよ。」
と答えたのには、
みんなが驚いていた。
一番驚いたのは拓実自身だった。
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ののん(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます！色々あれやこれや悩んで試行錯誤しながら書いておりますので、そう言っていただけると、本当に励みになります！りんさんのコメント読んで嬉しくてニヤけちゃいました笑 (2021年4月29日 1時) (
レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - こんにちは。瑠姫くんの12時〜シリーズからののんさんのお話のファンになったのですが、このお話ほんっっっとに好きです､､､。本物の小説を読んでるみたいにドキドキしてしまいます。いつも素敵な物語をありがとうございます(T^T) (2021年4月28日 1時) (レス) id: a55fc0b198 (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - はっぱさん» コメントありがとうございます(^^)全部読んでくださったんですか？ありがとうございます(T_T)期待に添えるお話を書けるかどうか不安ですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです! (2021年3月31日 23時) (レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
はっぱ - ののんさんのお話全て読ませていただきました！今回も推しの純喜くんが出るのでさらに楽しみです！ (2021年3月31日 13時) (レス) id: ede0d803b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ののん
| 作成日時：2021年3月28日 23時
