臆病２ ページ36
すると、那奈心ちゃんはカバンを開いて
くしゃくしゃに丸められた紙を俺に手渡した。
それは不器用な文字で書かれた彼女の付箋だった。
「これ…？」
「２人が仲良く話す様子を見て、
與那城さんのポケットから盗みました。」
俺が翔也を初めて見た日の事だ。
俺が付箋を失くしたわけじゃなかったんだ。
「私のお母さんがLINEをやってなかったので、お母さんの電話番号で新しくLINEのアカウントを作って、與那城さんの振りしてあの子にLINEしたんです。そしたらあの子、本気で私を與那城さんだと思ったみたいなんです。」
那奈心ちゃんは眉尻を下げて笑った。
「気になってたんです。だって変じゃないですか。何であの子は私と同じ学部なのに、学部の違う與那城さんと仲が良いのか。
私もサッカーサークルの歓迎会にも行ったし、見学にも行ったのに、與那城さんは私のことを全然気に掛けてくれないんだもん。
何であの子ばっかり。何か秘密があるんじゃないかと思って、しばらくLINEしてたら、あの子が話してくれたんです。
『この前のライブ素敵でした』って。それで２人が仲が良い理由がわかったんです。あの子がこっそり與那城さんのライブに通ってるからなんだって。
まあその後、あの子にはそのLINEのアカウントが私だって気づかれちゃったんですけどね。」
「そういうことだったんだ。」
俺は記憶をひとつひとつ辿って、Aちゃんの行動に納得した。
「でも、もう私だって與那城さんのライブに行ってるんだから、あの子だけが特別じゃないですよね？
私だってあの子以上に與那城さんの歌が好きです。ライブだって感動しました。
それなのに…。」
那奈心ちゃんが俺にすがりつくように見つめた。大きな瞳には今にも流れ落ちそうな涙の粒がたまっていた。
「ライブは、確かに来てくれて嬉しかったし、１人でも多くの人に聞いてもらえたら俺は感無量というか、本当にありがたい事だなあって思うけど、
Aちゃんがひとつひとつ俺の歌を大事そうに聞いてくれるのが俺にとっては特別なんだ。ライブに来てくれることだけが特別なんじゃないよ。
那奈心ちゃんが告白してくれた時、
本当に嬉しかった。
でも、ごめん。
俺はAちゃんが好きなんだ。」
那奈心ちゃんは瞳から涙がポロリと落ちた。
「何で？あの子彼氏いますよ？」
那奈心ちゃんの声が上擦った。
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ののん(プロフ) - コメントありがとうございます!!これからも更新頑張ります^^ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
りさ(プロフ) - 大好きです！これからも更新楽しみにしてます(^^) (2020年4月20日 23時) (レス) id: f70137444b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ののん
| 作成日時：2020年4月20日 21時
