いつもと違う彼女３ ページ34
俺は目の前にいる彼女の手を掴んだ。
離しちゃいけない。
彼女は一瞬掴まれた手を震わせて、微かに頬を赤く染めた。ゆっくりと首をかしげた。
キーンコーンカーンコーン
次の授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。
彼女がチャイムの音を聞いて、立ち上がろうとした。重そうに膨れ上がったトートバッグを肩に掛けた。
「授業遅れますよ、っわ。」
俺は立ち上がろうとする彼女の手を引っ張った。
彼女が勢いよく俺の胸に飛び込んできた。
すでに学生たちの移動が終わったのだろう。
静かな階段の吹抜にチャイムの音がフワンフワンと残っていた。
すると、上階から男の子たちがバタバタと階段を下りてきた。俺たちに気付いて、慌てて下りてきた階段を駆け上がった。
「わっやっばい、見てあれ。
與那城さんじゃねーの？
こんなとこでよくやるよな。」
「てか、あれ？女の子の方、中野さんじゃなくね？まじかよー。よくやるよなー。」
男の子たちは階段を避けるように反対方向へと歩いていった。
彼女が俺の胸をぐっと押し返した。
「誤解、されますよ。」
俺は彼女のか弱い力に抵抗して、彼女が離れないようにギュッと抱きしめた。
俺が抱きしめると、折れてしまいそうなほど、彼女は華奢だった。
細い細いとは思っていたけど、いつも強気だったせいで、彼女がこんなに繊細な身体つきをしていることに、全く気が付かなかった。
俺は力を緩めた。
まるでひよこにでも触れるかのように、優しく彼女の肩を持って、そっと離した。
「誤解されて、いいんだよ。
むしろ、誤解じゃないから。」
彼女を見ると、頬を赤く染めていた。
でも今は、いつもみたいに俯いたり、顔を隠したりせずに、潤んだ瞳で真っ直ぐ俺を見つめていた。
「周りに後ろ指さされたり、
嫌な噂を流されたりするのが苦痛だった。
だから断れなかった。
でも、俺が本当に好きなのは…」
そこまで言って
口をつぐんだ。
まだ言っちゃダメだ。
彼女は目をそらさずに聞いていた。
俺は立ち上がった。
「いや、ごめん。
この先はちゃんと清算してからにする。」
俺は彼女の手を引っ張って立ち上がらせた。
「はい。」
彼女はトートバッグを肩にかけ直し、
俺の横を通り過ぎて
タンタンタンと駆けるように
階段を下りていった。
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ののん(プロフ) - コメントありがとうございます!!これからも更新頑張ります^^ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
りさ(プロフ) - 大好きです！これからも更新楽しみにしてます(^^) (2020年4月20日 23時) (レス) id: f70137444b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ののん
| 作成日時：2020年4月20日 21時
