失くした代償３ ページ13
「與那城先輩、私の付箋持っていますか？」
彼女が突然核心ついた。
俺は顔面蒼白になった。
「ごめん！大事にポケットに入れたんだけど、
いつの間にか失くしちゃって。
本当にごめん。」
慌ててパチンと手を合わせて謝った。
彼女が果てしなく呆れた顔をした。
「與那城先輩は、個人情報保護という言葉を聞いたことはありますか？」
彼女の不気味に静かな声が
怒りをあらわしていた。
「はい、知っています…」
「でかめの男が年下の女の子に
怒られてるんですけど、ウケるー」
織田先輩がパステルカラーの爪を揺らして
手をたたいて笑った。
彼女が織田先輩を見つけて
ペコリと深くお辞儀をした。
織田先輩が彼女に小さく手を振った。
「ところで、こちらは與那城先輩ですか？」
彼女が真っ新なiPhoneの画面を俺に向けた。
画面には俺が送ったLINEの履歴画面が映し出されていた。
「そうだよ。
何で返事くれなかったの？」
俺は自分の携帯を確認すると、
未読だったメッセージが既読になった。
「こっちが本物やったか。」
彼女は俺の質問を無視してつぶやいた。
そして、紙袋をそっと渡してきた。
「これ、先日お借りしたジャケットです。
ありがとうございました。」
「いえいえ、ご丁寧にありがとう。
髪の毛とれてよかったね。」
「はい。」
彼女は口を横一直線にして
一瞬悲しそうな表情をした。
「どうしたの？」
「私はあの子に言ってしまったようです。」
「え、何の話？」
彼女の話が突然すぎて何の話か理解できなかった。
「與那城先輩の歌声が素敵だと。」
今日の３限に那奈心ちゃんが話していた内容は本当だったようだ。
織田先輩もいるので、
彼女は少し言葉を濁したようだった。
なんで彼女が那奈心ちゃんに話したのかわからなかったが、
「いいよ、別に。
秘密にしておこうと思ってたわけでもないし。
いつの間にかそうなっていただけだから。」
と俺は静かに言った。
彼女はうつむいて、長い黒髪で顔が見えなくなった。
俺は彼女の肩に触れようとした。
すると、突然彼女が顔を上げた。
「でも、私は謝りません。」
？
「元はと言えば、
與那城先輩が私の付箋をなくしたことに起因しています。
直接的原因は私ではありません。
したがって、私は謝りません。」
彼女がまくしたてるように言った。
「では、失礼いたします。」
彼女がいつもの通りのスピードで
講義棟を去っていった。
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ののん(プロフ) - コメントありがとうございます!!これからも更新頑張ります^^ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
りさ(プロフ) - 大好きです！これからも更新楽しみにしてます(^^) (2020年4月20日 23時) (レス) id: f70137444b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ののん
| 作成日時：2020年4月20日 21時
