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会いたい人には大抵会える。
話したい時に話せる。
知らないことはたくさんあるけれど、調べれば分かるものがほとんど。
私の前にある端末1つを使うだけで、世界と繋がれる。
オーバーな表現かな?
でも、大げさじゃなくて、そうだと思わない?
私が生きる世界はここだけど、世界はここだけじゃないんだよ。
「面白い発想ですね、Aさん」
私の問いかけに答えたのは画面の中のバーチャルアシスタントだ。
「変、かな?」
「いえ、想像力が豊かで素敵ですよ」
ありがと、と私はバーチャルアシスタントに返し、椅子から立ち上がり伸びをする。
私はごく一般的な、よくある間取りの部屋で1人で暮らしている。
だけど、私自身は一般的ではなく、変わり者と呼ばれるような人間だ。
「んー、今日も全然進まなかったね…この辺にしておくよ」
「かしこまりました、お疲れ様です」
これまでにない軽量化と画面の大きさを両立したその端末が大して増えも変わりもしていない文章のデータの保存を行う。
私はこの部屋で1人、物語を書いている。
いわゆる、作家だ。
かつて、作家や画家なども1つの職業として存在していたようだが、私が生まれたこの時代ではとても不安定で稀有な存在だ。
AIに代表されるような電子技術はあっという間に精度を上げ、私たちの生活に入り込んだ。
バーチャルアシスタントもその1つで、スケジュール管理や調べもの、時にはーー私の場合はほとんどこの目的だけど、話し相手にもなってくれる。
人間の仕事も機械に取って代わられるなんて言われてたけど、私が端末を使いながら物語を書いているように、共存できている部分もある。
しかし、プログラミングやデジタルの分野が発展し、重宝されるようになると共に、人間の手による芸術や創造系の分野全体は少しずつ縮小していってしまった。
だから、私のように自分の想像力を頼りにして生活を営んでいる者は“変わり者”として扱われ、中には敬遠する人たちもいる。
でも、私は0や1の数字や記号だけでは創り出せない世界があると信じている。
そんな信条も含めて、“変わってる”、“夢見がち”だと言われてしまうんだけど。
そんなことをぼんやりと考えていると、ピピッと端末が音を上げた。
「Aさん、新しいメッセージを受信しましたよ」
「え?仕事の依頼かな?そんなわけないか…誰から?」
「ネオ・エレクトロニック・ワンダー・ステイト社、です」
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Nono(プロフ) - soboroさん» soboroさん、コメントのお返事がとっても遅くなってしまい、ごめんなさい…!楽しみに待っていただき、そしてこのページに遊びに来てくださりありがとうございます!! (2023年3月27日 21時) (レス) id: b787eddcb9 (このIDを非表示/違反報告)
soboro - 更新ありがとうございます!密かに楽しみに待ってたのでとっても嬉しいです! (2022年11月15日 0時) (レス) @page26 id: fea91e615b (このIDを非表示/違反報告)
Nono(プロフ) - momoさん» momoさん、コメントありがとうございます…!確か、以前にもコメントをいただいたかと思うのですが、長い間待っていただいて本当にありがとうございます!改めて楽しんでいただけるように頑張ります!よろしくお願いいたします!! (2022年9月19日 19時) (レス) id: 2d0e74762d (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - ずっとお話の更新待ってました、!めっちゃ嬉しいです! 無理のない程度に頑張ってください!本当に更新ありがとううございます!! このシリーズのお話ホントに大好きです! (2022年9月18日 23時) (レス) @page18 id: 6dd93aac59 (このIDを非表示/違反報告)
Nono(プロフ) - 紗奈さん» 紗奈さん、こんにちは!コメントありがとうございます!過去作品も楽しんでいただけてとても嬉しいです…!!今作も楽しんでいただけるように、頑張りますね…!!ぜひまた遊びにきてくださいね! (2020年12月13日 18時) (レス) id: 250d3608a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nono | 作成日時:2020年10月29日 23時