五色 ページ6
兄さんはいつもだんまりで、喋ってくれなかった
兄さんは、声がでないから。出せないから
喉が悪いらしい。ずっとずっと、兄さんの声を聞いたことはない
出そうとしてくれた声は掠れた息で、兄さんはいつも悲しそうにしてた
でも優しかった。いつも頭を撫でてくれるし、笑ってくれるんだ
『………会いたい、な』
みんなに
寂しくて苦しくて、虚しくって
世界がよりいっそう、窮屈に感じる
色が見えても、みんなが居なくちゃ意味がないんだよ
言ったじゃないか。いつか、色が見えるようになったその日には、皆で色んな景色を見ようって
何か欠けていても良いから。皆に会いたい
何か過ちを犯しても良いから。皆の顔を見たい
『独りは、嫌だよ。置いていかないで。僕も一緒に、連れていってよ…』
"生きてほしい"なんて言わないで。
きっと知らないんだろうな。僕がどれだけその言葉に、呪いに縛られたのか
狡いよ。どれだけ僕を苦しめたら、気がすむんだよ
こんなにも世界は狭くて、つまらなくて、苦しいんだよ。先に遠くへ行かないでよ。置き去りなんて、酷いじゃんか
とてつもなく寂しくて、あの重みのある袋を取り出して抱き締める
不思議と安心する。まるで、みんなが本当に近くにいてくれてるみたいだ
足が上手く動かせない母さん
傷の治りが遅くて病弱な父さん
声が出ない兄さん
色が認識できない僕
目が見えない弟
僕たちは皆、"普通"で在ることを許されなかった
それらが欠落していると知られれば、周りは皆遠くへ離れた
仲が良かった子も、よく話してくれた子も、可愛がってくれた叔父さんも、面倒を見てくれた先生も、皆、皆
誰が"普通"なんて物を生んだんだって、ずっと憎んでた
周りの目が、声が、全てが、僕たちは普通じゃないと見せつけるように教えるんだ
そんな時もずっと、身を寄せ合って死ぬ思いで生きてきた
『独りに、しないで…!』
何も要らないから、今のままでもいいから、帰ってきてよ
この止まらない涙を、また拭ってよ。頭を撫でながら、抱き締めながら、背を擦りながら、名前を呼んでよ
僕の、僕の名前を………、？
あ、れ…僕、僕は……僕の、名前は…
「×××……?」
なんだっけ？
『あ、はは……は、はは…』
―僕は、誰？―
"ほら見ろ、お前は失敗作だ"
闇がそう
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すずめねこ(プロフ) - ありがとうございます〜! (2020年9月4日 22時) (
レス) id: 2c248db6f8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 面白かったです！続き楽しみにしてます！ (2020年9月3日 19時) (レス) id: af730a2065 (このIDを非表示/違反報告)
ハイキュー大好き！！(プロフ) - 続きがとても気になります。更新楽しみにしてます。頑張ってください！！ (2020年8月9日 20時) (レス) id: 2d39102061 (このIDを非表示/違反報告)
すずめねこ(プロフ) - コメントありがとうございます!そう言っていただいて恐縮です…。遅くなるとは思いますが、頑張って更新したいと思います。何卒よろしくお願いしますm(._.)m (2020年6月22日 21時) (レス) id: 2c248db6f8 (このIDを非表示/違反報告)
緋真 - 初コメ失礼します。続きが気になります！更新頑張ってください!! (2020年6月22日 11時) (レス) id: 4e6eadfb12 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2020年6月19日 20時
