命の恩人 tn ページ21
『ｯはぁっ……！』
腹部が酷く痛む。右側。
だいぶ深くいかれたなぁ…。血止まんない…。
大きな瓦礫の影に逃げ隠れ、そのまま背もたれにして座り込む。
敵兵が減ってきたのはいいけど、その分傷だって多いんだよなぁ…。
『これでも一応、戦闘の担当幹部なんだけどなぁ…。』
自嘲的な笑みが溢れる。
「A！」
私の名を呼びながら駆けよる彼は、私のよく見知った顔。
『トントン…！』
「出血量が割と多いな…。とりあえず応急処置を…」
彼が私に応急手当をしようとした瞬間。
彼の背後から剣を向ける敵兵が目に写った。
『まってトントン！後ろ！』
「！」
警告が間に合ったようで、ギリギリのところでトントンが剣で敵兵を吹き飛ばす。
「ちょっと待ってろ。」
そのままトントンは走り、敵兵を蹴散らしていく。
華麗な剣捌き。なんでもそつなくこなす彼は、剣の腕も良かった。
「おい！そこで弱っている女の方を狙え！そいつも幹部だ！」
『なっ…！！』
私がまさに今背もたれにしていた瓦礫の裏から敵兵の影。
あぁー…なんか今までの色んな思い出や情景が思い浮かぶ。これが走馬灯かぁ…。
ぽけーっとしていると、突如赤いマフラーが私の視界を覆う。
「なぁにボサッとしてるんですかねぇ。」
『…え、あ…』
さっきまであっちいたじゃん、とか思いながら返事をする。
「…あと」
そして彼が次に口を開けた瞬間、辺りがシベリア並みの寒さと鋭い冷たさに覆われる。
「そちらの方々は、なぁにこいつに手出そうとしてくれてんすかねぇ。」
一言で言うならば、一瞬で場が凍った。
そのまま心臓を射抜くような眼光で、相手を威嚇するように睨む。
相手はそれを見れば、怯まずにはいられない。
その隙に敵兵を一掃する彼の姿は、とても赤く輝いていた。
やがて一掃し終えたトントンは、私のほうを向く。
「大丈夫か？」
つい先程までオーラに見えるほど放っていた殺気がどこにも見当たらない、優しい顔つきで私に問う。
『う、ん。…ありがとう…。』
状況にとても追いつけない私の頭では、こんな回答が精いっぱいだった。
それを聞いた彼はというと。
「…良かった…。」
瞬間、私の心臓は波を変えた。
今治療までしてくれている命の恩人とも言える彼に対して、何を考えているのだろう。
けれど確かに感じた。
「帰ろう」と手を差し伸べる彼の手を取りながら、私は案外チョロいのかもしれないなと、また自嘲的な笑みが溢れた。
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のの(プロフ) - うみさん» ありがとうございます！とても励みになります！少しリアルが忙しい時期に入っていて更新ペースが安定しないのですが、ゆっくりと待ってやっていただければと思います…！ (2018年9月17日 3時) (
レス) id: c28b761704 (このIDを非表示/違反報告)
うみ - んああもうきゅんきゅんです、、、しんどい好きですっっ！！ふたつの長編のほうもこれから読ませてもらいますねっっすごく楽しみです！！毒素脅威推しなのでその3人の特に好きです！！これからも更新頑張ってくださいっっ…！！ (2018年9月2日 23時) (レス) id: 3d5242b8e0 (このIDを非表示/違反報告)
のの(プロフ) - 檸檬さん» そう言っていただけてとても嬉しいです！長々と更新していくことになると思いますが、また面白いと思っていただけるものを書いていきたいです！コメントありがとうございます！ (2018年8月23日 7時) (レス) id: c28b761704 (このIDを非表示/違反報告)
檸檬(プロフ) - 一緒に帰っていい？のお話めちゃくちゃきゅんとしました…！またお時間ありましたら続きを是非見たいです！更新頑張って下さい！応援しています！ (2018年8月23日 7時) (レス) id: 41b43bbcdf (このIDを非表示/違反報告)
のの(プロフ) - うめるさん» そちらのほうが的を射ているかもしれませんねwその読み間違え私は面白くて好きですよwコメントありがとうございます！ (2018年8月22日 23時) (レス) id: c28b761704 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：のの | 作成日時：2017年1月29日 17時
