君の隣で yuzuru H*

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それから、ほどなくして



王子様のお城に住む事になった人魚姫。



王子様の隣に居る事。



それが何よりの願いだった。



しかし。



舌と引き換えに手に入れた足は



歩くたびに刺す様な痛みが走る。



だけれど、彼に笑って欲しくて



痛みを我慢し、彼女はいつも笑顔だった。



また、舌が無く話す事の出来ない彼女は



愛しい王子様に



心から愛しているという事も



嵐の夜に助けたのは私だと言う事も



何一つ口に出来なかった。



そして、理解できない人間の言葉に戸惑い、



見境ない行動はきっと理解されなかったと思う。



そして、きっと何度も泣きそうになった。



残酷なことに、王子様は偶然浜を通りかかった娘を恩人だと勘違いし、



感謝の念からその娘と結婚することを決める。



そのことがなによりも人魚姫にはつらかった。



あまりのことに悲嘆に暮れる人魚姫。



そんな彼女前に現れた姉の人魚たちが、



美しい髪と引き換えに海の魔女に貰った短剣を彼女に差し出した。




｢ この剣で王子を殺しなさい! ｣




｢ そしたらあなたは生きていられるわ! ｣




｢ 泡にならなくて済むのよ!! ｣




彼女は何度も何度も迷っただろう



自分を愛してくれない王子様なんて



いっそのこと殺してしまおうか



何度も何度もそう考えたのかもしれない。



けれど、静かに眠る王子様の上で



剣を振りかざしてみるものの



その剣を振りおろす事は出来なかった。



そして、人魚姫は、



王子様に気付かれず、海の泡となった

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