君の隣で yuzuru H*

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｢ A! ｣



完全に出遅れた。



背を向けて歩き出した彼女の腕を曳いたのは



他でもない大輔くんだった。



しかしその手をはねのけて




｢ ごめん。構わないでくれる?


　今は、話したくない気分なの。」




そう言って彼女は冷たい目できつく言い放った。



何も言えずその場に立ち尽くした大輔くんは



行き場の無いその手をそっと握りしめて、



自分自身を嘲笑うように小さく声を漏らした。



それからも、ずっと戻ってこないAちゃんに



完全に明るさをなくした選手たち。



彼女一人の存在がどれだけ大きなものなのか、



痛いくらいに感じた。



彼女が居ない時間は過ぎるのがとても遅くて。



やっと夕方になったころ。



体力も精神的にも皆、限界だった。




｢ ちょっと行ってくるわ。｣



そう言って休憩中にベンチから腰を上げたのは



大輔くんだった。



どうしてだろう?



どうして、" 君の隣に " いつも居るのは彼なのだろう。




｢ ゆづ、


　こういう時に行かなきゃ。ね? ｣



僕に小さく耳打ちした佳菜は、



眉を下げたいつもと違う笑い方をしていた。




｢ すいません、僕も練習ちょっと抜けます。



　佳菜、僕も行って来てみるね。｣



ベンチから立ち上がり、



そう言葉を残して大輔くんの後を追った。

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