君の隣で yuzuru H*

31* ページ32

*Man*




｢ 羽生くん、っ


　皆、見てるから...! ｣




消えてしまいそうな声で、



彼女が今できる必死の抵抗を。



それでも、愛しさは増すばかり。



今、この腕を離さなかったら



君は僕の事を嫌ってしまうの?



腰にまわした手。



ぎゅっと力を込めて抱きしめた。




｢ ねぇ、お願い...


　恥ずかしい、から。 ｣




力の込められていない腕で、



真っ赤になった顔で、



拒まれた所で、この腕を解こうという気持ちは全く起きない。




｢ ねぇ、どうして恥ずかしいと思うの?



　それは、相手が僕だからそう思うの? ｣




ちょっとした意地悪のつもりだった。



この問いかけに君は何て答える?



自分で言うのもおかしいかもしれないけれど、



勝算はあった。



自分でも可笑しいほど、



僕は自惚れていた。



耳まで赤くして俯く君のその姿に



僕は期待していた。



僕が君に抱く感情と同じものを



君も持ってくれると信じ込んで疑わなかった。




" 無言の肯定 "




自分の良い様に解釈して。



自分の良い様に受け取って。



僕の口から出たのは、



満足と優越感からの



鼻で笑う小さな声。



この時ほど自分の都合のよさに



嫌気がさすなんて思いもしていなかった。

32*→←30*

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す