22話 ページ23
大学での前期試験を終え、いよいよ夏休みが始まる今日。
わたしは駅でマサさんを待っていた。
祐希以外の男の人と二人きりでご飯を食べることなんて滅多にないから、柄にもなくそわそわしてしまう。
服装おかしなところないかなとか、一応周りに見つからないようマスクをしてきたけど暑苦しくみえないかなとか。
あれこれ考えているうちにあっという間に家を出なきゃいけない時間になってしまっていたので、待ち合わせ時間にはちょっとギリギリだ。
今はちょうど夕方だから駅前は人通りが多め。
マサさん気づいてくれるかなぁと考えていると、改札口から慌てたように出てくる周りより一回り背の高い姿が目に入る。
少し背伸びして手を振ると、すぐにこちらに気づいて笑顔で駆け寄ってきてくれた。
「Aちゃん!ごめん、お待たせ」
「全然待ってないから大丈夫です!マサさん、今日は誘ってくださってありがとうございます」
ペコリと頭を下げて挨拶をすると、マサさんは少し困ったように笑いながら首を振る。
「Aちゃんは相変わらず真面目だね。今日は息抜きだしそういうのなし!ふつーにタメ口でもいいよ」
「え、マサさんにタメ口なんて無理ですできないです!」
「えーーーー」
拗ねたように口を尖らせるマサさんは、わたしより年上なのにすごく可愛らしい。
こういう後輩にも気さくなところが祐希も大好きなんだろうなと思うと、思わずふふっと笑いが込み上げてきた。
「そんな顔したって無理なものは無理です(笑)」
「・・・まぁすぐには無理だよね。じゃあ、今日一日かけてAちゃんと仲良くなるから」
「・・・・・・え?」
マサさんはそう言うと、それまでの幼っぽい表情から一変して急に大人っぽい顔つきでこちらに笑いかけてきた。
さっきまで可愛らしいなと思っていたのに、やっぱりこの人はわたしより年上の−−大人の男性なんだと少しドキッとする。
「じゃあ行こっか・・・あ、人混み多いから手、かして」
「え?・・・え?」
混乱した頭のまま言われるがままに手を差し出すと、マサさんは私の手を取りそのまま歩き出してしまった。
夏場なのに少し冷んやりしたマサさんの手と対称にわたしの体温が急に上がった気がする。
慌ててマサさんの名前を呼ぶと、いたずらそうに「人、多いからはぐれないようにね」とマサさんは笑った。
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作者名:のの子 | 作成日時:2015年12月14日 13時