21話(石川祐希) ページ22
「祐希はさ、Aちゃんと付き合わないの？」
今日からバレー部の練習試合ということで、いつもより早く起きて早朝練習。
軽くストレッチをしながら足を伸ばしていると、隣に座ってきた洸史が唐突にそんなことを言った。
「・・・洸史、それ高校時代から何回目？」
「だってさ、少なくとも高2の頃からは好きだったわけだろ？いい加減告白しないのかなぁって」
そうか、もう3年も経つのかと思いを馳せた。
多分もっと前からAのことは好きだったんだろうけど、その気持ちに気づいたのは高2の冬に誘われたアイスショーの時だった。
未だに覚えてる。リンクの上で男性スケーターと踊る姿に嫉妬して。あそこにいるのが俺ならよかったのにってずっと考えながら観てたっけ。
「昨日もさ、あの後二人でご飯食べたんでしょ？なんもないの？いい雰囲気になったりとかさぁ」
「あぁ、うん・・・」
Aは中々自分から弱音を吐いてくれない。
だから昨日のように苦しんでいるときは、こっちからアプローチしていかないと無理矢理自分で消化しようとしてしまう。
それが良いところでも、悪いところでもあるんだ。それは幼馴染である俺がよくわかってる。
ただAに必要とされてる俺は、きっと幼馴染としての俺で。
恋人という立場になっても俺を受け入れてくれるのか、ずっとその自信が持てなかった。
「でも、そろそろ俺も限界なのかなぁ・・・」
昨日、Aに泣きながら「祐希みたいになりたい」って言われた時。
俺がAに憧れて。
そばにいるから頑張ろうって思えて。まったく違う競技で違う試合会場にいても、ずっとずっと心の奥で支えられてたように。
−−例えほんの少しでも、俺のことをそういう風に想ってくれたのかな。
そう考えた瞬間愛しいって気持ちが溢れて−−慌ててスケートの話で誤魔化さなかったら多分、そのまま抱きしめてキスをしてしまったんじゃないかと思う。
「自分の中で、一区切りついたらかなぁ」
「ワールドカップ終わったら？」
「うん、今はとりあえずワールドカップ。それが終わったら、一歩踏み出そうかな」
恋人としての俺を、もしかしたら拒否されるかもしれない。
例えそのリスクを背負ってたとしても、もっとAの近くにいたいって気持ちが強くなっているのは確かだった。
「・・・実ったら盛大に祝ってやるからな」
「あはは、期待してる」
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作者名：のの子 | 作成日時：2015年12月14日 13時
