20話 ページ21
その日の夜、夢を見た。
わたしは練習着の上にコートを羽織っただけの姿でなぜか走っていて・・・真冬なのに少し汗ばむくらい。
もっと走るスピードを上げたいのに、練習の疲れもあって思うように足が動かないのが妙に現実味を帯びていた。
しばらく走り続けていると大きな体育館が見えてきて、夢の中のわたしは焦ったように体育館の扉を開ける。
開いた先には、チームメイトと大きくガッツポーズをする祐希の姿。
得点ボードには3-0の表示がされている。
−−ああ、よかった。今度は間に合った。
そうホッと一息ついて祐希に手を振った途端、視界が真っ暗になった。
真っ暗で何も見えない中、突然祐希が肩の痛みを訴え出す声だけが聞こえてくる。
「いってぇ・・・」という声、監督が何やら指示を出している声、武智くんが大丈夫かって心配する声。声。声。
どこにいるんだろうと必死に辺りを見回しても、視界は全て暗転していてわからない。
このままじゃいけないのに、祐希の近くに行きたいのに、祐希の痛みに苦しむ声を聞いていることしかできなくて。
−−あぁ、まただ。
やがて祐希の声が、違う人の声に変わる。
『 』
−−そんなの、わたしが一番よくわかってるのに。
〜〜〜〜〜
その日は珍しく、ハッと飛び起きるように目が覚めた。
耳元にはけたたましくアラームが鳴っているスマホ。
またあの悪夢だ。もういい加減にしてほしいと思いながら髪をかきあげる。
−−そういえば祐希は今日来れないって昨日言ってたっけ。
そう思い出しながらスマホを開いてアラームを止めると、LINEの通知が来ていることに気づいた。
こんな朝から誰だろうと思って開くと、画面には「柳田将洋」の表示。
『タカの写真ありがと!ちょうど今日から数日間、東京にいるんだけど、よかったら会わない?Aちゃんがこないだ教えてくれたお店行ってみたい!』
寝起きの頭だから「なんで急にマサさんが?」とか「二人っきりで?」とか深く疑問も持たずに、わたしはオーケーの返事をしていた。
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作者名:のの子 | 作成日時:2015年12月14日 13時