2話 ページ3
「A?二限間に合わなくなるから、いい加減起きろ〜」
「う・・・ん・・・・・・ゆう、き?」
「はーやーく!俺も遅れちゃうだろ!」
引越しの時にこだわって選んだカーテンをばさっと開く音がして、部屋の中に眩い光が差し込んできた。
せっかくぐっすり寝ていたのにと思いながらうつ伏せにしていた頭をゆっくりと持ち上げると、目の前には見慣れた幼馴染の顔。
いくら毎日のように見ているとは言っても、目と鼻の先にある端正な顔に少し心音が上がったような気がした。寝起きの頭でぼーっとするけど、はやく離れないと・・・
「お、起きます起きます!おはよう!ってかなんで、顔近いって離れて〜!」
「Aが起きないのが悪い。わざわざ寮から来てやったんだから感謝しろよなぁ〜。
ほら、俺部屋から出てるから早く着替える!置いてくよ」
「まって!すぐ着替えるから、置いてかないで!授業出なきゃただでさえ遠征で少ない出席が...単位落としちゃう!」
慌ててバタバタとメイク道具を出して、癖のついた髪をドライヤーで直していると、洗面所のドアの前でうずくまっている祐希が恨めしそうにこちらを見てきた。
「・・・無防備な格好ばっかして、ちょっとは俺の身になれよ・・・」
「え、なに?なんか祐希言った?聞こえないよ〜?」
祐希が何か口にした気がするけど、ドライヤーの音で上手く聞こえない。
もう一回言ってと振り返りながら言うと、ますます祐希からじとーっと睨まれた。
思わずドライヤーを止めて見つめ返す。
「な、なに・・・?」
「なんでもない!Aはほんとバカだなぁって思っただけ」
「なにそれ!日本のフィギュア界エースに向かってひどい!」
「自分で言うな。あ、ほら急げ!あと30分!」
「え!やばい、ごめん急ぐ急ぐ!」
朝に弱いわたしは、試合やショーの時はとにかく大学だと気が抜けて起きれないことが多い。
そのせいで大変なことになってしまった1年の前半の単位を知ってからというもの、祐希はこうして時間が合う限り一人暮らしをするわたしの家に来て起こしてくれるようになった。
いじってくるし、よくチビって言ってくるし、意地悪なところもある幼馴染だけど
本当に困っているときは昔から手を差し伸べてくれる祐希のことを、わたしは『幼馴染として』大好きなんだ。
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作者名:のの子 | 作成日時:2015年12月14日 13時