キミがいないと、上手く翔べないんだ (ページ13)

今日:7 hit、昨日:4 hit、合計:58,739 hit

12話(石川祐希) ページ13

なんとか清水さんと深津さんからAを引き剥がすと、もう他の人に絡まれないようにできる限り急いで着替えを済ませて迎えに行く。

だけど先に支度を終えた健太郎さんと山内さんにまたAが捕まってたりして・・・二人を追い払うのに余計な体力を使ってしまった気がする。

なんだかんだあって体育館を出た頃には、外はすっかり真っ暗。

二人並んで家路を急いでいると、不意にAが口を開いた。

「あ～、今日は楽しかった～。ワールドカップは9月からだっけ？応援行きたいなぁ」

「俺はもうぐったりだけどね！Aは秋ぐらいからまた海外？」

「10月のグランプリシリーズアメリカ大会が初戦だから、その少し前にはアメリカに行くけど・・・多分9月中は日本にいられると思う。ここで授業出席しとかないと、シーズン中はあんまり授業出られないからね」

「ならワールドカップ観に来れるじゃん！席のチケットお願いして取ってもらうから観に来いよ。俺もAの大会観に行きたい」

「もちろん練習の合間に応援に行きたいけど・・・マスコミにバレたら騒がれそうだし、こっそり見にいくね。祐希たちに迷惑かかっちゃう」

「マスクとか眼鏡してれば、観客席までじっと見られないからバレないよ。いざという時はタカとか洸史の後ろに隠れれば大丈夫！」

「あ、そっか。みんな背が高いもんね。ふふ、中央大バレー部のみんなは本当頼りになるなぁ」

去年のソチオリンピックで思ったほど結果が残せなかったAは、去年以上の練習量で次のシーズンに臨もうとしている。

もともと練習熱心だったけど、ここのところ思い詰めてるようにスケートとバレエに熱中していることが多かったから、少しでもバレー観戦が息抜きになればいいなと思う。

「祐希、ありがとね」

「べ、べつに・・・ほら着いたよ、鍵出して！大会の日程が決まったらすぐに教えろよ」

「もちろん。大学がある時は祐希に起こしてもらわないと留年しちゃうし。じゃあまた明日ね、おやすみ～」

「おやすみ」

Aが一人暮らししているマンションの部屋まで送り届けると、ここから歩いて15分ほどのバレー部の寮に向かった。
帰ったらタカにLINEのこと問い詰めなきゃな～。

－－その時の俺は、Aの幼馴染というポジションに不満を覚えながらもどこか安心していて。
マサさんがAを好きになっていたなんて、ちっとも考えもしなかったんだ。