検索窓
今日:12 hit、昨日:8 hit、合計:28,593 hit

いつか、僕の夢を聞いてくれ ページ9



「うまい!うまい!」

「うまい、」

「うまい!うまい!」

「うまい、」


癖が強すぎる。うまいうまいと言いながら飯を駆け込む男女を見て、食事処にいた客達は困惑顔で二人を見つめていた。


「うまいか!安食少女!」

「んむっ、うまいです」


Aの返事に、杏寿郎は「そうか!」と大きな声を出した。そのでかでかとした声に周りの人間はビクリと体を跳ねさせた。覇気がありすぎる。



事の発端は、本部からの帰り道で彼に呼び止められた時に遡る。


あの後、杏寿郎は少女がAだと分かるや否やずんずんと近づき、道の真ん中でいきなり少女を抱き上げたのだ。いきなりの浮遊感にAが目を丸くさせると杏寿郎は「息災なようだな!」と嬉しそうに目を細めていた。

哪田蜘蛛山での報告の件から、Aはこの炎の男に会う度に絡まれるようになっていた。だからなのか、今回も彼はAの変わらぬ姿を見ると「また軽くなっているな!君はもっと食べないとだめだ!」と、少女をズルズルと食事処へ引っ張っていったのだ。


机に並んで食事をとる姿は、見ようによっては仲睦まじい兄妹にも見えてくる。幼い妹にご飯を食べさせてあげる兄、世間ではこう見えていたっておかしくない。




『君!柱合会議に来ていた隊士だな!』

『う、?はい』

『君の使用する呼吸は炎の呼吸派生だと聞いた!どうだ、俺の継子にならないか?鱘少女!』

『かじ、?私は安食Aです』

『む、そうだったか!それはすまなかった!君の実力は聞いている!俺の継子になるといい!』

『うーん、?』



黙々と食事をとる中で、Aは初めて杏寿郎と対面した時のことを思い出す。杏寿郎は、Aの新人とは思えない活躍に興味を持ち、それから執拗に継子にならないかと少女を勧誘した。

Aは、継子にこそならなかったが彼の並々ならぬ潜在能力や滲み出るオーラにはとても惹かれていた。また、村田同様に自身と話をしてくれる数少ない存在の杏寿郎をAは絆された猫の如く控えめにも懐いていた。



杏寿郎の瞳の奥には、メラメラと燃える炎と共に誰よりも優しさに溢れた暖かい炎があった。それは自身を育てた次郎丸のものによく似ていた。ギョロりとした見開かれた目は、ある意味で少女に安心感を与えてくれたのだ。




「次の任務が長期になりそうでな!十二鬼月かもしれないと言われている!」


「十二鬼月…、」


「うむ!だから今日、君の顔が見れてよかった!」




話したい事が、きっと沢山あるんだ→←欠落しているから、彼らは美しい



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.4/10 (219 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
330人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 原作沿い
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - 素晴らしい作品ですね。表現の仕方や文章体等がとても私好みでこのような作品、作者様に出逢た事を嬉しく思います。更新楽しみにしてますが、このご時世ですのでお身体に気を付けて下さいませ! (2020年8月2日 9時) (レス) id: 7ce36be9af (このIDを非表示/違反報告)
Regulus(プロフ) - とっても面白いです!更新楽しみにしてます(((o(*゚∀゚*)o))) (2020年4月7日 12時) (レス) id: 9c91fd3a1d (このIDを非表示/違反報告)
瑞姫 - 素敵なお話ありがとうございます。炎柱の継子になるんでしょうか?楽しみにしています。 (2019年10月17日 13時) (レス) id: 4cdf8b95a1 (このIDを非表示/違反報告)
ルカ - ドチャクソ面白い………更新頑張ってください! (2019年9月30日 16時) (レス) id: ffbf18fb0d (このIDを非表示/違反報告)
飴李(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!応援してます! (2019年9月26日 3時) (レス) id: 3704481379 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:しきみ | 作成日時:2019年9月23日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。