竈門炭治郎は愛を囁きたい ページ15
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意中の人に意識してもらうには自分の愛を囁くのが一番である。遊郭に潜入した際に、遊女の女性がそんなことを言っていたのを思い出す。愛の囁き、つまりは相手に好きだと伝えるという事だ。それは善逸のようにすればいい事なのだろうか。否、愛の言葉はそう簡単に言っていいものでは無いと俺は思う。それに善逸みたいに声を大にしてなんて、とてもじゃないが俺は恥ずかしくて出来ないだろう
「(Aさんはどんな言葉をかければ俺を意識してくれるだろうか…)」
俺、竈戸炭治郎が想いを寄せる女性は姉弟子であるAさんだ。彼女を一目見た時から今日まで、俺は彼女への想いを拗れに拗らせてきた。彼女が隣にいるだけで、彼女の匂いが少し香るだけで呼吸も出来なくなるような俺に愛を囁くなんてそんな事出来るわけない
「はぁ…」
「炭治郎ったらそんな溜息吐いてたら幸せが逃げちゃうよ?」
「わ!Aさん?!」
何で彼女がここに?!あまりにも近い距離で俺を覗き込んでいた彼女に思わず頬が上気する。女性特有の甘い匂いに脳がくらくらする。
「若い内からそんな溜息吐いてたら義勇みたいになっちゃうよ」
動揺する俺を他所にAさんはケラケラと笑いながら俺の隣へと腰掛ける。彼女の隊服から伸びる白い足が眩しい。思わず視線を逸らすと彼女は「変な炭治郎」と困ったように笑った。貴方の前じゃ俺は俺じゃいられなくなる
「ねぇ、そんな下ばかり見てないで!顔を上げて炭治郎!」
「え?」
「ほら!今日は満月なんだよ!」
彼女に言われたように空を見上げると、そこには暗い夜を照らす大きな月があった。その美しさに思わず目を見開く。なんで気づかなかったんだろう
「満月はいいねぇ」
そう呟くAさんは酷く優しい瞳で月を見つめていた。月の光が彼女を照らしていて、それはこの世のものじゃないようなくらい俺には美しく見えた。彼女の視線を浴びられる、月にも俺は嫉妬してしまいそうだった。彼女の視界を俺だけにしたい、どうしたら、彼女は此方を見てくれるだろうか。どうしたら彼女は俺を、意識してくれるだろうか。そこでふとあの遊女の話を思い出す。意中の人にかける特別な意味を持つ言葉
俺は強く決意して、彼女の傷一つない手にそっと触れる。それに驚いたように此方を向いた彼女の瞳にはやけに真剣な顔の自分が映っていた。
言え!竈戸炭治郎!男になるんだ!
大きく息を吸って、たった一言囁いた
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「月が綺麗ですね」
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チョコ - 更新楽しみにしています! (2019年11月3日 22時) (レス) id: 156c93a62a (このIDを非表示/違反報告)
ポンポネッラ(プロフ) - 私も最近になって本誌派に切り替わったのですが、展開が辛すぎて.......泣きっぱなしで常に情緒不安定です。無一郎推しとしては地獄でしたあ(遠い目) (2019年10月23日 14時) (レス) id: 96af192ec7 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - お館様のエロみてみたい・・・お願いします (2019年10月21日 13時) (レス) id: b6b3e612da (このIDを非表示/違反報告)
ベル(プロフ) - 煉獄さん……なんかキュンキュンしちゃう鬼舞辻のエロもありだ……お願いします (2019年10月16日 11時) (レス) id: efb845659a (このIDを非表示/違反報告)
お餅 - 煉獄さん…なんか…うん…好きだぁ… (2019年9月21日 23時) (レス) id: 62210c11db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しきみ | 作成日時:2019年8月3日 14時