大丈夫だから前を向け ページ50
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Aが那田蜘蛛山での事を話すと、数人の柱達が顔を歪め始める。傷の多い柱に至っては舌打ちまでする始末だ。Aは慣れない正座に何とか耐えながら、彼等の会話に耳を傾けた。
「…やはり最近の隊士共は質が落ちている!これでは鬼殺隊士の名が廃る!」
「全くだな。育手に問題があるのではないか?隊士の育手も鍛え直すべきだ」
めちゃくちゃに言っているが、彼等の言うことも正しい。一人の鬼に何十人もやられていては、鬼殺隊は破滅してしまう。人を食べて鬼が強くなるように、こちら側も更に強くなる為の修行が必要だ。柱達の会話に、Aがボーッと話を聞いていると頭にぽんと手が置かれる。その温かさにAは目を見開く。
「A、ご苦労さま。もう下がっていいよ」
「え、」
「あ、Aさんはとりあえず私の屋敷で預かりますので隠の方に連れて行って貰ってください」
「え、」
蝶のような隊士が、困惑するAを他所にポンと手を叩く。すると部屋の扉がゆっくりと開き、先程の隠二人が頭を下げて入ってくる。Aを抱き抱え、再度柱と輝哉に向かって必死に礼をすると、二人は光の速さで部屋を出た。Aは抱き抱えられたまま、あの時間はなんだったのだろうと地面をじっと眺めた。
「っやっべぇ!!まじ柱やべぇ怖ぇ!俺手汗止まんないんだけど!」
「…俺、蛇柱さんにめちゃくちゃ睨まれてた…何もしてないのに…」
「てかお前はよく平気であの空間いられたな?!俺だったらちびる!」
「…」
何だかよく分からないが、兎に角窮地は脱せた。隊律違反の事を言われるのかと思っていたが、何故聞かれなかったのだろうか。それとも、今回の件についてはそういうのは無しという事になったのだろうか。鬼殺隊に対し、少女の謎は深まるばかりだった。
「あの、私はこれから何処に連れていかれるんですか」
「おっめぇはほんとに話聞かねぇな?!蟲柱様の屋敷で休息させろって言われてんの!」
「虫…?」
「蟲柱の胡蝶しのぶ様。さっき君を連れて行けって俺達に命令してた人だよ」
「あの人すげぇ美人だよな!すげぇ怖いけど…」
「はぁ、」
兎に角、休暇を貰えるのか。流石に連続で任務に行くのは足が疲れてしまう。少しの休息に、Aは小さく喜んだ。早くこのすっからかんの腹の中を米で満たしたい。そんな欲を残しながら、少女は屋敷に着くまでの間、隠の背中ですやすやと眠った。
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しきみ(プロフ) - しゃろさん» コメントありがとうございます!勝手ながらにリニューアルしてしまいましたが、楽しんで頂けて何よりです!暫くは早めの更新となりますので、ゆっくりでも読んでいただけたら嬉しいです! (2019年8月31日 19時) (レス) id: 0cd86406d9 (このIDを非表示/違反報告)
しゃろ(プロフ) - コメント失礼します。リニューアルされる前のお話も好きだったのですが、こちらのお話も読み応えがあり、以前よりも読むのが楽しくなりました。あなたの書く文章がとても好きだなあと感じています。季節の変わり目、体調などにお気をつけて更新お待ちしております。 (2019年8月29日 23時) (レス) id: 29ef3d46ba (このIDを非表示/違反報告)
りんご - お話とても面白かったです!金平糖のことなのですが、織田信長の好物だったらしく、ポルトガル(?)との貿易で入手したらしく活躍した部下には直々に渡していたようですよ。 (2019年7月10日 18時) (レス) id: 7ea393d4f2 (このIDを非表示/違反報告)
しきみ(プロフ) - あいうえおさん» ありがとうございます!早く他のキャラクターも出せるよう大急ぎでお話進めていきたいです!頑張ります! (2019年7月9日 0時) (レス) id: 0cd86406d9 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - とっても深いお話でいいなと思いました!更新頑張ってください! (2019年7月8日 7時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しきみ | 作成日時:2019年7月7日 5時