その糸が切れない限り ページ45
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「坊や、坊やが庇っているのは鬼ですよ。危ないですから離れてください」
ヒソヒソと炭治郎に向かって声をかけ、蝶のような女性隊士はにこやかに笑みを作る。全てにおいて余裕のある態度だ。その言葉に炭治郎が焦ったように「自分の妹だ」と言えば、女性は眉を下げ、可哀想なものを見るようにして口元に手を当て、そして
『では、苦しまないように優しい毒で殺してあげましょうね』
刀を手に優しい声色とは全く別の残酷な言葉を言い放った。その言葉に、炭治郎は顔を青ざめて絶句する。
炭治郎からすれば妹を斬られるなどこれ以上の絶望だろう。しかし彼等にとって今炭治郎が守っている者は、絶望の塊なのである。鬼を斬る、その為に鬼殺隊は作られたのだ。
この状況に、彼等がどう動くのか、Aはじっくりと観察した。すると黒髪の隊士が炭治郎に向かって何かを呟く。大方、逃げろと言われたのだろう。炭治郎は禰豆子を抱いて全速力で走り出した。
炭治郎が走り出した瞬間、Aは黒髪の隊士とばちりと目が合ってしまった。どうやら少女の気配は最初からバレていたようだ。行け、とでも言わんばかりのその眼力にAはそのまま炭治郎の向かった方へと駆け出した。
「(炭治郎はこのまま、鬼殺隊を辞めるのかな、)」
地面を蹴って高く飛び上がり、木から木へ飛び移りながらAは考えた。逃げるのならば、Aはそれを手伝うべきなのか。禰豆子炭治郎共々の頸を斬ると約束したのは自分自身だ。他の者にそれを取られるというのも、何故かAは癪に障った。
「(…！見つけた、)」
やっとこさ市松模様の目立つ羽織を見つけ、Aは側へ行こうと足に力を込める。しかし次の瞬間、Aよりも先に他の木から人が降りてきたのだ。滅と書かれた隊服を身にまとっている、鬼殺隊士だ。
その鬼殺隊士は、炭治郎の背を思いっ切り踏みつけ、前に転がった禰豆子に向かって刀を振るいあげる。しかし炭治郎が咄嗟に服を引っ張り、体が傾き炭治郎の背へと座り込む。炭治郎は禰豆子に逃げろと叫び、禰豆子はそれに従って駆け出した。隊士は炭治郎の脳天に踵を落とし、禰豆子の後を追っていった。
Aは沈んだ炭治郎の近くへ降り立ち、意識があるか確認する。
「もし、炭治郎大丈夫？」
「っ頼む…禰豆、子…」
「…」
意識を手放す間際にも妹の安否を炭治郎は願う。Aはその姿を目に焼き付け、刀を抜いて走り出した。
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しきみ(プロフ) - しゃろさん» コメントありがとうございます！勝手ながらにリニューアルしてしまいましたが、楽しんで頂けて何よりです！暫くは早めの更新となりますので、ゆっくりでも読んでいただけたら嬉しいです！ (2019年8月31日 19時) (
レス) id: 0cd86406d9 (このIDを非表示/違反報告)
しゃろ(プロフ) - コメント失礼します。リニューアルされる前のお話も好きだったのですが、こちらのお話も読み応えがあり、以前よりも読むのが楽しくなりました。あなたの書く文章がとても好きだなあと感じています。季節の変わり目、体調などにお気をつけて更新お待ちしております。 (2019年8月29日 23時) (レス) id: 29ef3d46ba (このIDを非表示/違反報告)
りんご - お話とても面白かったです!金平糖のことなのですが、織田信長の好物だったらしく、ポルトガル(?)との貿易で入手したらしく活躍した部下には直々に渡していたようですよ。 (2019年7月10日 18時) (レス) id: 7ea393d4f2 (このIDを非表示/違反報告)
しきみ(プロフ) - あいうえおさん» ありがとうございます！早く他のキャラクターも出せるよう大急ぎでお話進めていきたいです！頑張ります！ (2019年7月9日 0時) (レス) id: 0cd86406d9 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - とっても深いお話でいいなと思いました！更新頑張ってください！ (2019年7月8日 7時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しきみ | 作成日時：2019年7月7日 5時
