心臓に穴が空いている ページ31
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夜も更け始め、辺りを月だけが照らす時刻になり始めた頃。一人部屋の寝室にて、Aは自身の刀の手入れをしていた。それはもう念入りに
少女は考えていたのだ。山を下る時も、屋敷に入る時も、風呂に浸かっている時も三人と食事をとっていた時も。ずっとずっと考えていた。あの箱の中の鬼をどうするべきなのか、考えて考えたAの結論は結局鬼を斬ってしまう事だった。
「鬼の味方をしてはいけない。鬼は罪人。生きていてはいけない、」
何度も何度も繰り返しその言葉を脳に巡らせる。少女にとって鬼という存在は特に関心も置くことの無いどうでもいい存在だった。ただ自身の大切な一人の人間が、鬼を酷く恨んでいるから、消さなければならないのだ。例えあの箱の中の鬼が、炭治郎の命より大切なモノだったとしても、だ。
外から差し込む月明かりへと自身の刀を掲げる。紅蓮の燃えるように紅い刀が、血のように輝いている。殺さなければいけない。例え恨まれたとしても、嫌われたとしても、Aは鬼を斬らなければいけない。そうでなければもう自身には、何も出来ることは残らないのだ。なのに、なのに何故だろうか、
「何だかとても息苦しい、」
動脈が激しく動いている。緊張しているのだろうか。今日の自分はどこかおかしい。Aはそれだけははっきりと分かっているのだ。それでも酷く喉が渇く。やめてくれと誰かが叫んでるみたいだ。
『殺すの?』
「殺すよ」
『でもきっと炭治郎が悲しむよ。善逸だって、』
「ただ一日一緒にいた人に情が湧くの?」
『…』
「鬼は、地獄に落ちなきゃいけないんだ。鬼がいなければ幸せな世界だったかもしれない、あの人がいつも言ってたでしょ?」
『でもあの人の幸せな世界に貴方はいないかもしれないよ』
「…」
『可哀想な子。貴方は鬼よりも可哀想。どこにも行けないのね』
悪魔なのか、天使なのか、よく分からないものが囁いている。Aは刀をぎゅうっと握りしめて何度も深呼吸をする。そして考える。今から自身は炭治郎を救ってやるのだ、と。もし自身が鬼をここで殺らなくても、結局いつかはボロが出る。ボロが出れば炭治郎は対立違反で殺されるし、分かってて何もしなかった自分達も結局は殺される
これが一番いい選択なのだ。
Aは何度もその言葉を繰り返した。今ならまだ間に合うんだ。ゆっくりと立ち上がり刀を持って歩き出す。
隣の部屋から聞こえる騒がしくも楽しげな声は近づく程遠く感じた
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しきみ(プロフ) - しゃろさん» コメントありがとうございます!勝手ながらにリニューアルしてしまいましたが、楽しんで頂けて何よりです!暫くは早めの更新となりますので、ゆっくりでも読んでいただけたら嬉しいです! (2019年8月31日 19時) (レス) id: 0cd86406d9 (このIDを非表示/違反報告)
しゃろ(プロフ) - コメント失礼します。リニューアルされる前のお話も好きだったのですが、こちらのお話も読み応えがあり、以前よりも読むのが楽しくなりました。あなたの書く文章がとても好きだなあと感じています。季節の変わり目、体調などにお気をつけて更新お待ちしております。 (2019年8月29日 23時) (レス) id: 29ef3d46ba (このIDを非表示/違反報告)
りんご - お話とても面白かったです!金平糖のことなのですが、織田信長の好物だったらしく、ポルトガル(?)との貿易で入手したらしく活躍した部下には直々に渡していたようですよ。 (2019年7月10日 18時) (レス) id: 7ea393d4f2 (このIDを非表示/違反報告)
しきみ(プロフ) - あいうえおさん» ありがとうございます!早く他のキャラクターも出せるよう大急ぎでお話進めていきたいです!頑張ります! (2019年7月9日 0時) (レス) id: 0cd86406d9 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - とっても深いお話でいいなと思いました!更新頑張ってください! (2019年7月8日 7時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しきみ | 作成日時:2019年7月7日 5時