全て誰かの掌の上 ページ16
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炭治郎はとても鼻が利くらしい。匂いで鬼の場所が分かると言われた時、Aは羨ましそうに炭治郎の鼻先を見た。匂いが分かれば、一々高い所から鬼を探さなくて済むし、時間も省ける。試しに炭治郎の様に自身もスンスンと匂いを嗅いでみたが、Aには木々の香りしか感じられなかった。
善逸の手を引きながら炭治郎の後を歩く。Aに手を引かれた善逸は、帰ろう帰ろうと言いながらのそのそと歩いている。本当にこの人、何で生き残れたんだろう。善逸を見ながらそんなことを考えていると、いきなり立ち止まった炭治郎の木箱にAはゴンと頭を打った。痛い、
炭治郎の見つめる方向を鼻を抑えて覗き込めば、そこには古びた屋敷があった。
「…血の匂いがする」
「え?なんか匂いする?それより何か音がしないか?」
「音?」
Aは二人のように匂いを嗅いだり耳をすませてみるが、何も感じとれなかった。この二人は随分と五感の一部が優れているようだ。むーんと何も分からない自分にAは項垂れていると、炭治郎がぱっと横を向いた。善逸と共に同じ方を向けば、同じ顔の男女の子供が怯えたように立っていた。
「こ、子供だ…」
Aの背に隠れるようにして善逸がそう呟く。何でこの人まで震えてるんだろう、と思いながら子供達に近づいていく炭治郎の背中をAはじっと見つめた。近づく炭治郎に、子供は抱き合いながら更に震えた。
見兼ねた炭治郎は、二人を安心させるように距離を取って「じゃじゃーん!」と雀を見せた。ふわふわしていてチュンチュンと鳴く雀にAは思わずほわぁと興味津々に見つめた。Aも所詮は女の子な訳で、可愛いものには心動かされるのだ。子供は炭治郎の声に安心したのか、緊張が解けて涙をあふれさせ、声を震わせながら話し始める。
子供達の話をAがボーッと聞いていると後ろにいた筈の善逸が、耳をすませて屋敷の方を眺めているのに気がつく。
「善逸、どうしたの」
「Aちゃん、炭治郎、この屋敷変だよ…気持ち悪い音がずっと聞こえる。鼓か、?これ」
「音?音なんて…」
炭治郎と共に善逸のように耳をすませる。すると、最初は聞こえなかったその場にはとても不相応な音がだんだんと聞こえてきた。
ポン、ポン、ポン
音はどんどん大きくなる。どんどんどんどん近くなる音に耳がビリビリする
ポン
次の叩く音が聞こえた瞬間だった
屋敷の中から、血に染まった人間が落ちてきたのだ
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しきみ(プロフ) - しゃろさん» コメントありがとうございます!勝手ながらにリニューアルしてしまいましたが、楽しんで頂けて何よりです!暫くは早めの更新となりますので、ゆっくりでも読んでいただけたら嬉しいです! (2019年8月31日 19時) (レス) id: 0cd86406d9 (このIDを非表示/違反報告)
しゃろ(プロフ) - コメント失礼します。リニューアルされる前のお話も好きだったのですが、こちらのお話も読み応えがあり、以前よりも読むのが楽しくなりました。あなたの書く文章がとても好きだなあと感じています。季節の変わり目、体調などにお気をつけて更新お待ちしております。 (2019年8月29日 23時) (レス) id: 29ef3d46ba (このIDを非表示/違反報告)
りんご - お話とても面白かったです!金平糖のことなのですが、織田信長の好物だったらしく、ポルトガル(?)との貿易で入手したらしく活躍した部下には直々に渡していたようですよ。 (2019年7月10日 18時) (レス) id: 7ea393d4f2 (このIDを非表示/違反報告)
しきみ(プロフ) - あいうえおさん» ありがとうございます!早く他のキャラクターも出せるよう大急ぎでお話進めていきたいです!頑張ります! (2019年7月9日 0時) (レス) id: 0cd86406d9 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - とっても深いお話でいいなと思いました!更新頑張ってください! (2019年7月8日 7時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しきみ | 作成日時:2019年7月7日 5時