39.囚人番号005の心境整理 ページ50
いきなりだが。
囚人番号005、ぺいんとの頭の中はぐるぐると回っている。
例えば、今日のご飯は何だろう、とか。
例えば、しにがみはどこだろう、とか。
例えば、尋問はいつなんだろう、とか。
例えば、いつここから出れるんだろう、とか。
例えば、トラべぇになんてちょっかい出そう、とか。
例えば、
例えば、
例えば、
例えば、
(ここはどこだろう)
ぺいんとの中の一つの思考が、脳内で疑問を呈す。
(MILGRAMって監獄なのは分かったけど、僕は人殺しなんてしてないのに)
ぺいんとの中の、これまた一つの思考が脳内で疑問を呈す。
まあ大丈夫だよきっと、という思考もあった。
早くこんなところ出てしまおう、という思考もあった。
囚人番号005、ぺいんとの頭の中はぐるぐると回っている。
ギリギリギリと歯車と歯車が噛み合って動くような鈍い音。それはぺいんとの思考が絡み合って回る音。
ギシ、と音を立てて止まったかと思えば、
(あ。食事メニューのリクエストとかできるのかな)
その次の瞬間にまた違う思考が脳内に露呈した。
そんな思考達を、また(そろそろ部屋に戻ろう)という思考により切り上げて、ぺいんとは昼の食事からずっと続けていた机に顔を伏せる行為をやめた。
気まぐれで無邪気で、論理的で効率的で、人並みで普通で、それが『ぺいんと』と呼ばれる者を構成していた。
ぺいんととはそういう人間だった。それは変えようもない事実だった。
「ぺんちゃーん」
「らっでぃ」
ぺいんとの中で溢れて吹き出しそうな思考は、一人の人間に呼びかけられたことによって真っ白に消えていった。
囚人番号003、らっだぁ。
こいつもまたしにがみと同じく、ぺいんとにとっては仲の良い人間の一人だった。
らっだぁの顔を見るなり少しだけぺいんとの顔は晴れやかになる。こういうところが気まぐれで無邪気なのだ。
「失礼だと思わない?そりゃ人殺しだから事情聴取の余地はあるといえプライベートにぐいぐい食い込んだ質問される」
「なに、紙尋問のこと?」
「むしろもうここまで来たら俺のこと好きだと思うんだわ」
「俺の質問に答えて」
「ぺんちゃんはどう思う?」
「俺の質問に答えてよ」
はぁ、とぺいんとは一拍置いて、
「看守さんはお前のこと好きなわけないじゃん俺はお前をそういうところだと思ってる」
「手厳しいなあー一応最年長だよ俺」
らっだぁの自慢げな笑みに、ぺいんとは無性に湧き上がってきた思考そのままに右ストレートをぶちかました。
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作者名:白熊 | 作者ホームページ:
作成日時:2023年12月24日 10時