36.頼りになるトラべぇ ページ47
囚人番号002＿シャオロンの紙尋問期間が終わる、その少し前。
このミルグラムの中でも珍しい女性陣、看守ソーラは髪を結わえながらため息をつく。
(…らっだぁって扱いにかなり骨が折れるのよね…)
彼女の担当囚人、らっだぁと言えば、自己紹介で思いっきりバツ1なことを明かしたり、その上で自分に迫ってきたり、更にはそれを囚人達に見て監獄内でちょっとしたネタ騒ぎにされたり。明らかに自分より年上のくせに、明らかに自分より常識＿＿というか、マナーというかがなっていない。
バステンほどではないが、彼女は一応リケジョであり思考が論理的に偏っている。あまりにぐいぐいと来られるのはソーラの精神的苦痛として、正直なところ半端ではない。平和主義のソーラとしては、穏便に済ませたい部分が強かった。
＿＿まぁこんな甘すぎる思考を持つのは、看守としては妥当ではないのだが。
「…紙尋問、もうすぐ私なのか。…本気で10番みたいに入れ替えをお願いしようかしら」
もう一度深いため息をつく。
そんな調子で、
きれいな茶髪のハーフアップが完成したところで、
「…………トラべぇ」
「ほいほいっと」
ソーラが一言呼びかけると、自称魔法生物は何もなかったソーラの部屋の虚空を切り裂くように、突如としてそこに現れた。
「…胡散臭い生物よね」
「何が？魔法生物だもん、オカルトは当たり前だよ」
猫が見たら即座に目を輝かせてキャッチにしいきそうな具合で、白く垂れた耳(？)が揺れている。耳の終盤部分を囲う形で宙に浮く金色の輪は、相変わらずの不気味な光を灯している。
「前の仕事説明のとき面白いぐらいシリアス(笑)に会議終わってたけど」
「処すよ？」
「冗談じゃない」
「冗談に聞こえない」
「あなたは魔法を使えるけど、人間のユーモアがわからないのね」
「あいにくだけど、人間とは分かり会える気がしないね」
お互いに一触即発のような雰囲気を伴っているが、一応口調はお互い軽めである。それも含めて、ここではもういろんなことが『当たり前』になってしまったのだろう。
「で、本題に入るというか、一個質問なんだけど」
「なんだいなんだよなんですか」
ソーラはすぅ、と一泊置いて、
「…あなたは、全囚人の罪の背景を知っているのよね?」
「…さぁ？どうだろうね」
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作者名：白熊 | 作者ホームページ：
作成日時：2023年12月24日 10時
