33.囚人番号002＿紙の尋問 ページ43
看守のうち一人、アイクは紺色にも近い黒髪を揺らしながら歩いていた。
目深く帽子を被っているが、その帽子は規定で決められた看守帽ではなく支給品でトラべぇが取り寄せてきたものだ。つばは広く、その根本には黒色のリボンが巻かれている。シンプルな白色で構成された中折れ帽で、本人は結構気に入っているようだ。
さて。歩いているとは言ったものの、正直なところ特に目的地は特に無かった。
探索だとしても、狭い監獄『ミルグラム』は、多少歩き回っただけですぐに目新しい場所などなくなってしまう。トラべぇが現れることもない。
率直に言ってしまえば、
(……暇だな)
極限にアイクは暇だった。
「あ。俺の担当看守」
あまりにすることも何もなさすぎて、食堂で腕を枕に顔を伏せて睡眠を決めたアイク。…の元にやってきたのは、彼の担当囚人のシャオロンであった。
「担当看守言うな。アイクだよ002番」
「特大ブーメランありがとうございます」
煽るように不敵な笑みを浮かべるシャオロンに対し、アイクはその顔を小突く。しかし体格的にはシャオロンのほうが色々と上(主に身長など)なので、いくらアイクが頑張ってコツンとしようがびくともしないわけだが。
「なんか最近しにがみが不機嫌なんすけど。噂の”かみじんもん”ってやつやないんすか？」
「らしいですけどね。ともさんがどんな質問したとか俺は知らないし」
「俺にかみじんもんってのは無いんすか？」
今まで散々暇だなんだ言っていたアイクだったが、その発言でようやっとなにかを思い出したのか、小走りで部屋を出ていく。
シャオロンがその様子を呆然と眺めていたの、約4秒。
「ごめん紙尋問めっちゃありました‼」
ズサァァァ‼‼とアイクがスライディングしながら食堂へ戻ってくるまで、約3秒。
「おい時間の流れおかしいやろ絶対。俺の担当看守は人を卓越したの？」
「細かいことは良いんだよ。まぁそんなわけでアンタの紙尋問の用紙です」
未だ何かをぶつぶつ呟くシャオロンに対して、アイクが計7秒で持ってきた紙尋問用紙十数枚と、フリクションボールペンをぐいぐいと押し付けるアイク。どこまでも適当で粗雑な自分の担当看守を見ていて、シャオロンはこの先が不安で仕方なかった。
囚人番号002_シャオロン 紙の尋問
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作者名：白熊 | 作者ホームページ：
作成日時：2023年12月24日 10時
