31.001番の尋問 ページ39
あれから数日が経った。
数日も経つと、どうやら俺という人間は曜日感覚もなくなってしまうらしい。日めくりカレンダーがご丁寧についてて、トラベぇが毎日楽しそうに破っているのも見かけるけど、いまいち実感が湧かない。ここに来てからもう……4日目、になるんだろうか。
みんなに進展を聞いたら、もう担当囚人とは日常会話が出来るまでにはなってるらしい。…俺なんてまだまだなのになあ、と頭をかく。9番のゾムなんかは特に、癇癪を起こしやすい。10番がとなりでびくびく震えているのを見るのが日常だ。それを1番が見て微笑ましそうにするまでがワンセット。
ここにお酒でもあったら、メンバーと飲み明かして愚痴でも言い合えたんだろうか。…いや、あってもやらなかっただろうなあ…バステンさんがノッてくれる気がしない。
「看守さん。もしかしてフリーズしてる?」
いきなり下から、何やら高めの声が聞こえた。
音源元を辿ると、そこにはしにがみがいた。
ちょっと伸びた前髪を気にする仕草。そういえば昨日、
「…まじでともさん動かないじゃん?」
「あっいけないいけない。 ごめんごめん、どうかした?」
慌ててしにがみに向き直る。
「いや、特に…ただ、ずーっとぼーっとしてたので」
「そんな長い時間突っ立ってた…?」
疑問を浮かべながら過去を思い返すが、そんな感覚は無い。自分ワールドに入り込むとぼーっとしちゃうタイプなんだろうか、俺は。
と、あることを思い出す。
「あぁそうそう…しにがみに渡したいものがあって」
「おっ何だろう。プレゼント?」
「そんな大層なものじゃございません」
ぴしゃりと言い放つと、「えー!」っとこれまた納得できなさそうな声をしにがみが漏らす。
マントの裏のポケットから出てきたものを、しにがみに渡す。
「これこれ。ちょっとしたアンケートみたいなもの」
そう言って俺が出したのは、数日間頭を悩ませて出した『紙の尋問』の用紙だった。
「……厚紙?えっと……ここに書いてある質問を、この空白に書けばいいんですか?」
「うん。来週までに全部提出お願いね」
「うわ、結構あるなぁ…」という声を聞きながら、一本の鉛筆と消しゴムを渡す。
鉛筆を指の先でくるくると回しながら、しにがみは個室へと戻っていった。
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作者名:白熊 | 作者ホームページ:
作成日時:2023年12月24日 10時