16.刻一刻 ページ21
トラべぇとか言う…幻覚としか思えない容姿のやつに従って、一応18:00まで自由時間ということにしておいた。
戻ってそれを伝えたら「もう………もうおなかすいたよパン守ぅ…」とか変なことをもそもそ言うしにがみを放って(クミさんによる制裁済)、業務内容も知らされないから俺等看守は食堂でじっと待っていることにした。
「…そういえばクミさんさぁ、その警棒どっから引っ張ってきたの？」
話題を振ると、ジェスチャーやら雰囲気やらで説明しようとするクミさん。「喋るのが面倒くさいから」とは言うが、最早喋ったほうが楽なんじゃないだろうか？
きっと彼女には関係ないんだろうなあ…とも思いつつ。
「『その辺に転がってた』…？やばくないそれ…
『その場の勢いとノリとお試しでしにがみやっちゃってたけど 流石に今度から控えるよ 謝っとく』……えっと…ちゃんと謝れてえらいね…？」
「なんでともさんはクミさんの言葉わかるの」
「エスパーなんだよきっと」
そうこうしているうちに針は18:00を回っていた。
「んー終わった……あれ、君たちまだここいたの？」
と、調理室からトラべぇが出てくる。
「やることもわかんないからさ」
「基本情報は聞いとけって」
「だって囚人に自己紹介させてたらこっちの精神が持たないんだもん…」
「マジで何があったの？？」
看守の威勢もないまま雑談をする。自分でも打ち解けが早すぎてちょっと困惑しているが、まぁここで働く以上それが一番良いのかもしれない。
「食事全員分用意できたから、せっかくここにいるなら机に並べるの手伝ってよ」
「わかったー」
「もうともさんは何もつっこまないの？この生物に…」
そう言ってみんなで皿を持ってせっせか運んでの作業を繰り返す。ちゃみんとかwatoさんが割りそうでヒヤヒヤしてたけどふたりともちゃんと運んでくれたからよかった(割りとトラべぇも心配してたっぽい)。バステンさんなんかもうキビッキビ動いてた。すごい。
「じゃあ囚人連れてきて……あ、そうそう」
「何？」
「これ、9番と10番の鍵。」
そう言って、小さな手で渡してきたのは金色の鍵。
「…え、全員分揃ってなかったの？俺等」
「うん。なんとなく一人一部屋一担当にしようと思ってたけど君たち七人しかいないの忘れてた」
「俺、三部屋も担当すんの？」
「うん」
「………」
「仕事だよ」
「………ワカリマシタ」
もう一度囚人たちの元へ踵を返した。
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作者名：白熊 | 作者ホームページ：
作成日時：2023年12月24日 10時
