9.囚人番号004＿自己紹介 ページ12
「たらこ」
牢に出てからの第一声はそれだった。
＿＿＿＿004番は、今までに類を見ないほどの美少女だった。そう。美少女である。ふわふわな金色の髪を下げて、ゆるく2つに束ねると前に出している。ゴムは赤い花飾り、首周りは黒いチョーカーから伸びる黒ベルト。裏地の鮮明な赤のせいで、不覚にもそれはマフラーのように見えた。
ぱっちりとした目を持っている。オレンジとも苺とも言える色をした彩りに一瞬目を奪われていた。
ここまで来たら女。男続きの中やっと女が…！！と思った。囚人服も他の囚人とは違い、一人のみスカート仕様である。黒いベルトはスカートにまで侵食しており、その華奢な腕も締め付けている。
ちゃみんもソーラさんも、ようやっと同性が出てきて安心したのだろう、緊張がいくらか解けている。
だがしかし。
その声はとんでもなく野太かった。
「はいお前ら残念でした〜！女だと思った？そうだよね〜こういう場所を設けられるまで黙っとこうって思ってたんだよ。看守がいない間一回も喋らなかったね俺、無口な美少女デスって。蓋を開けてみたらどうだめっっっっっっっちゃ男だよ？悔しい？ねぇ今どんな気持ち？」
みんなぽかんとしている。よほど容姿に自信を持っているのだろう、自分でさえ美少女を騙っている。
普通に信じられなかった。
いやだってスカート！いやだって長髪！いやだってエトセトラ！容姿だけで人を区別するのは駄目だと分かっているのだがこればっかりはみんな間違えるんではなかろうか。
「自己紹介しま〜す。たらこです。ねり梅がこの世で一番好き。この容姿は〜俺が人を欺くために神様が授けてくれたんだと思うんだよね。おかげでグループの紅一点だと思われることめっちゃあって！あ、普通に全然男だよ。この囚人服はなんか知らんけど…まぁこれも神からの采配ってことだったんでしょ。よろしく〜」
皆が脳の処理が追いつかず何も言わない中、言いたいことを言い終えたのか一人で勝手に牢へ戻ってていく004＿たらこ。スカートを翻す仕草も、歩く動作も、全て「立てば牡丹 座れば芍薬 歩く姿は百合の花」に等しい。
皆現実を直視できず頭を抱える中、たらこは一人飄々としていた。
「看守サーン、ちょっと、早く牢閉めてよ。
俺普通に脱獄する気満々だからね」
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作者名：白熊 | 作者ホームページ：
作成日時：2023年12月24日 10時
