winter (ページ17)

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17.Ｔｓｉｄｅページ17

昔からひとつのモノに執着する事なんて無かった。
飽き性で習い事だって趣味だって続けられたことはなくて。
今の仕事が続いているのが不思議なくらい。

｢‥‥タマ？どうした？｣

今だって後輩の所へ向かう宮田を普通に帰す事が出来る‥ーー。

‥‥ーーそう思ってたけど。

｢‥‥か‥ないで。｣

宮田だけは違うんだ。

｢タマ？｣
｢‥行かないで。一緒に居てよ‥｣
｢タマ‥‥。｣
｢ごめん、今言うのは狡いのは分かってる‥。でも好き‥なんだ。お前が他の奴の所に行くのが凄い嫌で‥。その‥｣
｢‥‥‥。｣

何も言わない宮田。
自分勝手な事を言う俺に薄情な奴と呆れているのだろうか。
宮田の手に重なっている手が震えているのが自分でも分かる。

｢はぁ‥。｣

宮田の小さなため息が聞こえて心臓が凍りつく。
あぁ、やってしまった。

｢あっ、ごめ‥｣
｢ごめんタマ‥手退けるよ？｣
｢‥‥っ、う‥ん。｣

完全に拒否されてしまった‥。
それだけで全部が終わった気するのはそれだけ宮田への気持ちの大きさで。
昔、付き合ってた彼女に別れを告げる時、泣かれるのが凄く嫌だった。
なんか自分に酔ってる感じがして‥
自分はそんな事は絶対にしない思ってた冷たい人間なのに。
でも‥今の自分は？
恥ずかしながらも溢れる涙を堪えるのに必死だ‥。
さすがにもう我慢出来そうにない。

｢ごめん、変な事言って。気をつけ‥。｣

｢あ、モロ？今なにしてる？悪いんだけど佐久間の所に薬持って行ってやってくんないかな？そうそう、熱あるみたいでさ。俺が行けなくなっちゃってさ。ごめんね。よろしく。｣

｢みや‥っ‥。｣

スマホで話す宮田の優しい声が耳元で聞こえる。
絶対に失いたくない腕の中で涙が頬を伝うからﾊﾞﾚないように背中に腕をまわした‥ー。