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「はーい……」
木製のドアが開き、青年が顔を出す。
年齢は20歳前後といったところだろうか、
まだ幼さが残っている。
「あの、依頼があって来たんですけど…」
薮はそう言って、扉から覗く青年の目を見つめた。
すると青年は小さく返事をした後、扉を開け放したまま、
慌てた様子で細い廊下を走って行った。
暫くすると青年は細い廊下を走って戻ってきた。
「すみません……どうぞ」
青年はそう言って薮を部屋へと案内した。
茶色と白で塗られたレトロチックな廊下を歩いた先にあったのは、
アパートの外見からは想像もつかないほど、丁寧に整頓された広い部屋。
普段はここで依頼を受けているのだろうか。
薮は深紅のベロア調のソファに座るよう案内された。
「今、お茶準備してきますね」
青年はそう言って、間仕切りのカーテンの先へと姿を消した。
薮は未だ触れられていなさそうなソファに腰掛けて待つことにした。
暫くして、間仕切りの白いカーテンが微かに揺れる。
そこから現れたのは、先ほどの青年___ではなく、
青年よりも小柄な少女だった。
「初めまして、猫田探偵事務所所長の、
猫田Aと申します」
猫田はそう言って、薮に名刺を差し出す。
薮はそれに応えるように立ち上がり、
着けていたマスクを外した。
猫田は、薮が見下ろすと、
先ほどよりももっと小さく感じた。
ということは彼女からしたら、薮は相当大きく見えているのだろう。
しかし猫田は凛としており、
堂々とした様子で動じない。
見た目以上に、所長、という言葉が合っている。
「Aさん、もう来てたんですか」
青年がそう言って、
トレーに紅茶を淹れたカップを二つ置いて戻ってきた。
青年はトレーの紅茶を薮の前に置くと、
小さく礼をした。
「僕は探偵助手の西畑大吾です、よろしくおねがいします」
西畑は少し緊張しているのだろうか、表情が硬い。
猫田はそれに気づいたのか、西畑を横目で見る。
しかし猫田は特に触れず、薮をソファに座るよう促した。
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