のんとぼくの１００日間〔赤〕

15 _ はじめての思い出 ページ16

望 side .








Aの腕の中で寝てしまった大毅を抱えて病院を出る。




外はもうすっかり日が落ちかけてた。








そんな病院からの帰り道、久しぶりに通った桜並木には蕾が付いた桜がたくさん。




そういえば、Aと出会ってはじめて出かけた日に連れて来たっけ……








.








昔は母親に虐待されてて、離婚した父親とこっそりここで会うのが楽しみやった。




俺にとっては思い出な場所。








けど、どこか悲しさもあるその思い出を、嬉しい思い出に変えてくれたのはAと大毅やった。








Aに告白したのもこの場所。




大毅と3人で歩いたのもこの場所。








きっとこれからも、どんどん思い出は塗り替えられていくんやろうな。








.








「大毅…… 生まれて来てくれて、ありがとうな」








あの日Aと出会わなければ、




あの時Aが病気と向き合ってくれなければ、




生まれてくることのなかった命。








2人目の子が無事に生まれたら、4人でお花見に来るのが俺の夢やねん。








.








「大毅、お疲れ様。早よ熱治そうな……」








明日は幼稚園休ませるつもりやし、お風呂はまたでええか。




とりあえず布団敷いて、ピクリとも動かないぐらい熟睡してる大毅をそっと寝かせる。








「ほんま、こんな可愛い顔見てたら甘やかしたくなるわ。笑」








だから今日は久しぶりに、大毅と同じ布団で寝た。








.

16 _ はじめてのお休み→←14 _ はじまてのお見舞い

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す