兎じゃなく猫を追いかけると ページ8
｢あれ？お前…｣
仕事からの帰り道､奥の方から見覚えのある猫がこちらに向かって歩いてくる
優雅に歩くその姿はまるでランウェイを歩くモデルのように見えた
尻尾をゆらゆらと振り聞き覚えのある猫撫で声で私の足にすりついてくる
｢そう、お爺さんがあれを作り終わったから迎えに来たのかお前は偉いな｣
にゃー、と撫でてくれと言わんばかりに鳴くハチワレ猫の期待に応え眉間を撫でてやると
満足したのかすんとした顔で歩き出した
数ヶ月前､煉瓦の建物が並ぶ道を歩いたときと変わらず人通りもなく都会の喧騒には巻き込まれてなんかいなかった
カラン、コロン
と、ドアベルが鳴る｡
お爺さんがこちらに目をやり口元に弧を描いた
｢久方ぶりだね魅力的なお客様｡オルゴールできてるよ｣
｢どうもお久しぶりです｡本当に猫が案内してくれるとは思ってませんでした｣
私がそういうとお爺さんは初めて声を出して笑った
｢そりゃあ猫じゃないからね｡そいつは自分のこと人間だと思ってるんだよ｣
｢まぁ､人間が決めた括りですもんねこの子が人間だと言うのなら人間だ｣
｢そうだね｡わしは、この猫を若くして命を落とした妻の生まれ変わりだと思ってるよ｣
優しい目で猫を見つめるお爺さんはそう言うと私を見て話題を変えた
｢さ、こんな話はいいんだ。オルゴールだ、オルゴール｣
店の作業場に向かうと出来上がった金色に輝くオルゴールが置いてあった
ねじを巻くと木の上に寝そべった猫の尻尾がゆらゆらと動く装飾が施している
見蕩れているとオルゴールの木に寝そべった猫と目が合った気がして
思わず店の中を見回し猫を探すと猫は上の棚に寝そべりこちらを見ていた
すると、猫はチェシャ猫のように口をにんまりとして笑った
私への悪戯が成功して嬉しいらしい
｢買ってくれてありがとう｡気をつけて帰んなさい｣
｢いえ、こちらこそありがとうございました｡また来ます｣
お爺さんにそう言ってドアノブに手を掛けると猫が上の棚から降りてきた
どうやらまた私を送ってくれるらしい
煉瓦の建物が並ぶ裏路地と、ビルがそびえ立つ都会の境界線で猫は歩きを止めた
｢貴方､お茶は好き？｣
突然後ろから聞こえた声に驚き振り向くと着物を着た三十代前半の女性が柔らかい笑みを浮かべ立っていた
まるで夢のようだ
きっと私はアリスの役を演じきらなければいけないのかもしれない
｢では､次はお茶会をしましょうか｣
猫でも人間でもある貴方と男でも女でもない私で
白銀の世界から逃げようか→←雪と一緒に溶かして、ついでに貴方も
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李天(プロフ) - 天雨さん» 私の拙い文章で天雨さんの元気を出すことができ嬉しいです｡応援ありがとうございます！ (2023年3月27日 22時) (
レス) id: 82c62f24cf (このIDを非表示/違反報告)
天雨(プロフ) - この作品を読んで元気が出たような気がします。応援してます。 (2023年3月27日 17時) (レス) id: c9eb151fc4 (このIDを非表示/違反報告)
李天(プロフ) - ゆとりさん» ありがとうございます！もう少し続くので楽しんでいってください (2022年2月5日 21時) (レス) @page38 id: 82c62f24cf (このIDを非表示/違反報告)
ゆとり(プロフ) - 完結お疲れ様でした！ (2022年1月30日 21時) (レス) @page39 id: 71fcf47086 (このIDを非表示/違反報告)
李天(プロフ) - るるさん» 遅れてすみません！コメントありがとうございます頑張ります (2021年12月5日 20時) (レス) id: 82c62f24cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：李天 | 作成日時：2021年10月3日 22時
