５９歩目 ページ10
虎さんを”ハコ”からだして数時間が経っていて
空が赤く染まってきた頃、
漸く夕飯の時間となった。
「さっ、昨日言ったね。世話を焼くのは今日までって！」
「己の飯くらいおのれでつくれー！
カレー！！」
強制自炊の夕飯の時間と。
『ふぁあ…』
「Aちゃん眠たそうやね、大丈夫？
少し休んどったら？」
『…いや、飯盒くらいならできると思う』
轟くんが”炎”を出して燃やしてくれた
飯盒をたくための木の傍で両膝を抱えて座る。
『…ふぁ』
何度か前へ倒れそうになった頭を力づくで戻した時
私のすぐ隣で麗日さんの慌てるような大声が
私の耳をつらぬいた。
「Aちゃん！髪！火がうつって髪が燃えとる！！」
『ん…あ、ホントだ』
すぐ近くで光る前髪についている火種を
私は左手でギュッと前髪と一緒に掴んで鎮火させた。
おかげで、髪の一部がたわしのようにチリチリになった。
「素手で？！熱くないの？！」
『んー、まあ、小さかったし』
「ほへー、すごいなあ」
「蓮郭、あぶねえから座って待ってろよ。
代わりに食後の皿洗い、任せていいか？」
『うん、分かった』
私の様子を見かねた切島くんから
そう言われたので、私はおとなしく席で
皆が作ってくれたカレーを待って、
皆より少し遅いペースで食べ進め、
皆から食べ終わったお皿を集めて
水場で一通り洗って、皆より遅れて合宿所へ戻った。
そしてまたその次の日も、
早朝から、皆の心身をズタボロにする”個性”限界突破訓練が始まった。
「今日は”ハコ”に閉じ込めるの無しだからな！！」
『はい…』
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作者名：雪 | 作者ホームページ：http://commu.nosv.org/p/nomura
作成日時：2021年8月6日 11時
