ウタカタノオト3 (ページ4)

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「あ、ちなみに羽生さんはエキシビションどうしてるんですか？」

コーチはすぐにむっとした。
彼の名前を出すと分かりやすく眉をひそめて嫌そうにすることが最近よくある。

だからそんな表情には慣れてしまった。

「あいつは実績的にも演者的にもエキシに呼ばれないことなんかないし、確か毎年新しいの作ってるよ。今年はどうか知らんけど」

とりあえずナンバーはファンタジーでやったThe roseでいいよな？

途切れる間もなく質問が飛んできたものだから、半ば脳死状態で「はい」と返した。

エキシビションにも毎シーズンこだわっているのか。
きっと彼のプログラムだから、素敵なものなんだろうな。

点数とは関係のないその空間で、試合の形式に当てはめない、フィギュアスケーター羽生結弦の真骨頂が見られるのかと思うと、まだ見たこともないのに期待が湧き上がった。

「エキシビション改めウィニングラン……」

だったりする？
あ、でも試合に負けていたらただのリベンジランになりそう。

そこでも叶わなかったら次の試合にそのリベンジを持ち越す、という負けず嫌いさが安易に想像できた。

彼のモチベーションってそういうふうに保たれているのかな。もしかしたら。

コーチがエキシ派なら、私はエキシビ派を名乗ろうか。
何となくそんなことを思った。