ウタカタノオト3 (ページ24)

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「どうでした？」

第一滑走者からノーミスの演技という事態に会場がざわつく中、リンクを上がりすぐに首をこてんと傾げて俺にそう訊ねるA。

純粋な目で俺の返答を待つその表情には、嬉しさなど微塵もなさそうだった。

「どうも何もノーミスだろ」

上着とエッジケースを渡しつつ、俺は見たまんまの事実を述べる。

「いや、まあミスはしてないですかね」

「感触は？良くなかったか？」

「いえ。特に何も考えずに滑っていたので、気がついたら終わってました」

無心であの演技なのかよ。
思わず鼻で笑ってしまった。

キスクラに移動すると「わあ」とAが感嘆の声を上げる。

「何か……豪華ですね」

テレビ映りを気にしてか、日本で行われる大会のキスクラはいつも華やかだ。

「フィンランディアんときは簡易的だったもんな」

「そうは言ってませんけど」

「言ってるようなもんだろ」