ウタカタノオト3 (ページ19)

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#グラナディラを奏でるページ19

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身体が温まった頃、コーチが私を呼んだ。

もうすぐ6分間練習が始まるらしい。
アップを終え、スケート靴を履くと、コーチに連れられるようにしてリンクに向かった。

……なんか、静かだ。

前回出た大会は、もう少しガヤガヤしていたというか、色んな人があちこちで喋り続けていたような気がするのに。

音楽が止まると話し声も止む、といったような。軽くジャンプしたり身体を動かしたりするとそれが飛び抜けて響いている気がする。

耳をすませば、テレビ中継をしているアナウンサーさんの言葉も聞き取れそうだ。

それくらい、驚くほど静かに感じた。

これがいわゆる“独特の緊張感”とかいうやつだろうか。

「あー緊張するなあ」と思うのは、これから行う演技に対する不安や心配から、どこか自発的に出てくるのではなくて、こんなふうに周囲の状況や環境によって半ば強制的に出てくる感情なのかもしれない。

さっとんや羽生さんは、こういうものを何度味わってきたのだろう。

こういうものと、私はこれから闘っていくのだろうか。

それとなく会場全体を大きく見回す。
まだお客さんは入りきっていないようで、空席がいくつも見えた。

周りのレベルは、きっと前の大会より高い。
そんな中でどう闘うか、どう闘っていくか。

この試合は、これからの私の先行きを決める。

そんな舞台になる気がした。