ウタカタノオト２ (ページ40)

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……待てよ？

そもそもこんな演技を本来Aちゃんがするわけないだろうし、この演技自体が想定内もしくは戦略通りの可能性があったりする……のか？

もしそうだとして、何の意味があるのだろう。

エレメンツと呼ばれる要素だけ確実に行うことで得られる何かがあるのか？

本番で技を実施した際に確実に決める練習、とか？
あ、もしかしてまた会場に慣れなくて難易度を下げられるだけ下げたとか？

それが理由なら、この先もそのような避けられない壁は山ほど出てきてしまうけれど。

彼女ならどんな理由でもあり得そうで、考え出したらキリがなさそうだ。

「にしても試合観戦って思ったより体力使うなあ」

パソコンの前で大きく伸びをする。

今はSNSが発達しているから、昨日みたいにライストだって追えてしまうし、YouTubeには今までの試合動画がいくつもアップされている。

推しているスケーターを観ようと思ったら、自分の時間を削れば削るほど観れてしまう現実が存在する。
そのことに改めてスケオタさんの凄味を感じた。

「まあスケートに限らずだけど」

オーディオオタクな自分が暗くなったパソコンの画面に映って、思わず失笑する。

あの演技に対して、何かしらのピッタリな意図はすぐに見つからないが、目的が達成できているのなら充分なのかもしれない。

日本で会えたら、そのとき色々訊いてみよう。

今シーズンからは他の試合にも複数出られるだろうし、この試合でミニマムスコアを獲得できただろうから、実績の少ない彼女でもNHK杯のような大きめの国際試合に派遣される可能性だってある。

まだあくまで確率が増えただけではあるけれど、実現されたらと考えるとワクワクが止まらない。

シーズンを重ねるにつれ、今後彼女のスケーティングやプログラムが熟成されるのを期待した俺は、ただの一ファンだ。

「……あ、意図ってミニマムか」

思いつかなかった理由はあっさり見つかった。