ウタカタノオト２ (ページ36)

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「うわ……」

片付けたはずの荷物の中から、およそ2週間前に行われた試合結果の詳細であるプロトコルが出てきた。

今季初戦であるオータムクラシックを終えた俺は、部屋の中で自分のフリーのそれを見て気鬱になる。

「155か……」

初戦とはいえ、現世界王者である自分のフリーの点数とは思えない数字だ。

「技術点なんかショートとそんな変わらんし」

まぁジャンプ抜けまくってアクセル転けたわりには出たほうだと思う。

ショートでいきなり歴代最高点を更新してしまったのもあって、フリーは気持ちに身体が追いついていない気もした。

右膝の痛みから4Loは回避したものの、他のジャンプが安定感に欠けるんじゃ意味ない。
4Lzもオリンピックに向けて構成に入れられるようにしたいから、成功確率を上げていかなければならない。

今回トリプル予定だったフリーの冒頭、ルッツとループの2本を次のロステレコム杯でクワドに変えられるように。
まずは今季の試合を体調万全の状態で臨むために、また日々の生活から意識して気をつけていこう。

とりあえず終わった試合の反省はこのくらいにして、机上のパソコンを立ち上げる。

「ライブストリーミング……と」

今日はチャレンジャーシリーズのひとつ、フィンランディア杯が行われている。
ついさっき知ったのだけれど、これにAちゃんが派遣されてるらしい。

既にショートは終わっていて、残すはフリーのみ。

順位とか滑走順は知らないけれど、もしかしたらリアルタイムで追えるかもしれないから、無料で観れるライブストリーミングを探してクリックする。

「あーこのライスト画質荒いな」

滑走中の選手の衣装が水色っぽいということくらいしか分からない画質に失望する。

お金を払わずに観れるだけありがたいけれど、誰が滑っているかくらい分かるような解像度であってほしい。

別のライストあるかな、と探しているがなかなか見つからない。
やっと見つかったと思ったこちらのライストは、どんどんページが飛んで結局再生されないという報われない結果に。

「えぇ、どうしよ」

滑走順が早ければ演技が終わっている可能性だってあるからこの時間が無駄になる。

ショートが観れなかったからフリーは追いたいのに。