#5 ページ29
「羽生さんってどうしてもイヤホンの話に持っていきたいんですか」
「いやだから、どうせ聴くなら良い音で聴きたいだろうと思って勧めてるんだけど」
「それはそうですけど音質はこだわりだしたらキリがないんですって。イヤホンに何万もかけられないですし」
「別に何万もかける必要はないって。1個でもいいの持っておくと違うから」
「私はBUMP聴ければ満足なんですけど」
「じゃあ藤くんの声がちゃんと響いてベースとかの低音が効いてるのがいいよね。だとやっぱこういうタイプの方が……」
羽生さんって相当頑固な人だ。
話していてこんなに疲れるのは初めてに近い。
こんなに頑固だからこそ、いい演技が生まれてしまうのだろうか……そうは思いたくないけれど。
てか何本イヤホン持ってるの。
さっきから四次元ポケットから出してんのかってくらい何種類何セットものイヤホンが羽生さんの荷物から登場するのだが。
「えっと〜、これいくらしたっけな」
「さっき5万って自分で仰ってましたけど」
「あ、そうそう。あれ、興味出てきた?」
「出てません」
5万は私の中では十分高いのだが、出してくれたイヤホンの中では2番目くらいに安い。
感覚がおかしくなりそうだ。
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作者名:たこやき | 作成日時:2022年9月18日 20時